経営者が成果を上げるには<br />8つの習慣を身につければよい<br />特別の能力はいらないダイヤモンド社刊 1890円(税込)

「経営者が成果をあげるには、近頃の意味でのリーダーである必要はない。これまで会ったCEOのほとんどが、いわゆるリーダータイプではない人だった。彼らが成果をあげたのは、8つのことを習慣化していたからだった」(ドラッカー名著集(1)『経営者の条件』)

 この文章は、「ハーバード・ビジネス・レビュー」(2004年6月号)に寄稿したドラッカー94歳のときの経営者への最後の助言である。経営者として成果を上げるには、特別の気質も能力もいらないという。たった8つのことを身につければよい。これほどまでに力づけられる優しい言葉はない。

 第一が、なされるべきことを考えることである。ドラッカーはくどいくらいに念を押す。なされるべきことである。なしたいことではない。

 第二が、組織のことを考えることである。株主、従業員、取引先、経営者はいずれも大事である。しかし彼らのことを考える前に、社会の公器としての組織のことを考えなければならない。

 第三が、緻密なアクションプランをつくることである。経営者とは、行動すべき者である。そのためには、計画しなければならない。しかし、状況が変化すれば、ただちに変更していく。こうして、日常から事業の展開について、シミュレーションを行なっておく。

 第四が、意思決定を行なうことである。もちろん、意思決定は定期的に見直していく必要がある。

 第五が、コミュニケーションを行なうことである。特にアクションプランについて、コミュニケーションを行なわなければならない。

 第六が、機会に焦点を合わせることである。問題の処理が成果をもたらすわけではない。成果は機会がもたらす。

 第七が、会議の生産性を上げることである。会議に出ているか、仕事をしているかである。会議に出ていたのでは仕事はできない。

 第八が、「私は」ではなく「われわれは」を考えることである。

「成果をあげるには、性格、強み、弱み、価値観、信条はいかようであってもよい。なされるべきことをなすだけでよい。成果をあげることは、習慣である。したがって、他の習慣と同じように身につけることのできるものである。そして身につけなければならないものである」(『経営者の条件』)