SNS総再生数4000万回超! 英米やヨーロッパ、中国など海外でも注目され、台湾で開かれた個展には2万5000人もの観客が殺到と、いま最も注目の「鬼才」発明家、藤原麻里菜さん。その「無駄づくり」と称する異色コンテンツは、「いったい、どうやって思いついたのか!?」と思わされる、すさまじくユニークなものばかりだ。
今回、その思考の方法について、初めて公開した新刊『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』を発表。本書には、これまで数百もの作品を発表してきた藤原さんの71に及ぶ「考える術」が詰まっている。
「言葉から考える」「逆を考える」「短時間で考える」「欲から考える」など、その実践的な思考術は、読めば読むほど脳を刺激してくれる。合理性や効率性ばかり重んじて思考が偏っている現代人のアタマを一瞬でやわらかくする無駄なものの魅力と、最高に無駄な発明ベスト3について藤原さんに話を聞いた。(取材・構成/樺山美夏、撮影/柳原美咲)
これからは「無駄」が重要になる
――藤原さんの本を読んで、合理的なものより無駄なもの、簡単なものより面倒なものがアイディアのきっかけになり人生を豊かにする、という考え方にとても共感しました。
藤原麻里菜(以下、藤原) ありがとうございます。ただ私は、合理性自体は否定してないんです。効率的に何かをやろうとしたり合理的に判断しながら、人類が科学や技術を進化させてきたおかげで、私たちはすごく便利な生活ができるようになりました。その先にあるものが余剰であり、無駄だと思うんです。
たとえば今後、会社員が一日8時間かけてやる仕事の半分をAIがやるようになったら、余った時間ができますよね。その余剰の時間をいかに生きるかが、これからの人間の課題なんじゃないかなと。
それと、いま合理的なことばかり考えている人が多い世の中で、私一人ぐらいは非合理的なものをつくらないと世界のバランスがおかしくなりそうなので、この仕事を続けているというところもあります(笑)。正解がないものを楽しみたいという強い気持ちが、自分の中にあるんです。
――これまで合理一辺倒でずーっと走ってきて、このコロナ禍で急に立ち止まることになり、人生を考え直している人もいるのではないでしょうか。これからますます非合理的なことの必要性が高まるように思います。
藤原 あと、日々仕事や子育てに追われていると、「次に何をしよう?」ということがすぐ思いつかなかったり、何か始めたくてもじっくり考える余裕がなくなりますよね。
だから意識的に時間をとって、仕事と全然関係のないことを考えてもらえると、思考が切り替わって人生の次のステップに進む助けになるかもしれません。ふだん考えないようなことを幅広く考えてみるきっかけとして、『考える術』に収録した自由な考え方を使ってもらえるとうれしいです。
――私は『考える術』を読んでいる間ずっと笑いが止まらなくて、凝り固まった頭がだいぶほぐれました。せっかくなので、本書から藤原さんが「これぞ史上最高に非合理!」と考える「無駄なアイディアベスト3」をぜひ選んでいただけますか。
第3位:ラーメンの画像をすべてネジにするアプリ
藤原 では、まず第3位を挙げるなら、「ラーメンの画像をすべてネジにするアプリ」ですね。インスタに出てくるラーメンの画像を全部ネジの写真にしてしまうというアプリのアイディアです。
このアイディアは、「深夜にラーメンが食べたくなる欲求をどうすれば解消・解決できるか?」と考えて浮かんだものです。
とくに私の場合、SNSでラーメンの画像を見てしまうことが欲求のトリガーになるので、ラーメンの画像を「おいしそう」とは正反対にある「ネジ」に変換してくれるアプリがあれば、食べたい欲求を抑えられると思ったんです。
これはまだアイディアだけなんですけど、ぜひ実現したいです。
第2位:イントロクイズ目覚まし時計
――第2位はいかがでしょう。
藤原 これも本にアイディアを書いただけで、まだつくれていないんですけど、「イントロクイズ目覚まし時計」です。
これは実際につくったら売れそうだなと思っていて(笑)。設定した時間になると、音楽が鳴って、早押しボタンを押す感じでアラームを止めるというものです。
押した後に、三択の画面とかが出たら、ちゃんと解答もできますし。起きた瞬間からクイズができて、気持ちよく起きれると思います。
1993年、横浜生まれ。発明家、映像クリエイター、作家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とかつくりあげる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。SNSの総フォロワー数は20万人を超え、動画再生数は4000万回を突破、その人気は中国、アメリカ、ヨーロッパなど海外にも広がっている。2016年、Google主催「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展――無中生有的沒有用部屋in台北」を開催、2万5000人以上の来場者を記録した。Awwwards Conference Tokyo 2020、eAT2018 in KANAZAWA、アドテック2016東京・関西などで登壇。「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択。最新刊に『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』がある。