2020年の製造業におけるM&Aは前年比42件(19.4%)減の174件で、2年ぶりの減少となった。同年の全M&A件数(849件)に占める割合は20.5%。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う景気減速と先行き不透明感により、M&Aを手控えたとみられる。(M&A Online編集部)

 取引金額の1位から8位までがクロスボーダー(国際間)案件だった。国内案件はトップ10で1件にとどまり、トップ20まで広げても合計で3件しかない。製造業では国境を越えたM&Aが「当たり前」になりつつある。国際案件の買い手はトップ10内の9件中6件(66.6%)が外国企業、一方で11位から20位までの全てが国内企業と対照的な結果となった。コロナ禍で先行きが見通せない中、超大型買収については外国企業の方が積極的といえそうだ。

 今年話題になったのは製造業の取引金額で年間トップになった、ソフトバンクグループが9月に半導体設計会社の英アームを米エヌビディアへ約4兆2000億円で売却すると発表した案件。ソフトバンクグループはコロナ禍による株式市場の暴落で投資先の企業価値が下がり、2020年3月期の連結当期損益で約9616億円もの巨額赤字を計上した。

 そのため投資先の優良株を放出せざるを得なくなった。ソフトバンクグループは2016年9月に約240億ポンド(約3兆3000億円)でアームの全株式を買収していた。買収当時は「高値づかみ」とも言われたが、米アップルがパソコン「Macシリーズ」のCPUを米インテルからアームとの独自開発に切り替えるなどの「追い風」もあり、9000億円もの売却益を得る見通し。

 アーム売却以降、株式市況が好転したことと相まってソフトバンクグループの業績は急回復。2021年3月期第1四半期(4~6月)は当期純利益が1兆2000億円と、一転して大幅黒字に転換している。「背に腹はかえられぬ」で踏み切ったアーム売却が、ソフトバンクグループのツキを変えたといえそうだ。