日経平均3万円超えで
中高年はなぜ「嫌な予感」がするのか
経済人って、理屈抜きで悪い予感を感じるときがあるものです。私だけでなく、50代以降の結構多くの経営者やビジネスパーソンが、理屈ではなく予感として、日経平均株価が3万円を超えたことについて「嫌な気配」を背筋に感じています。
先に、断言しておきます。私は経済予測の専門家ですが、「株価に限っては未来予測が難しい」ということは常識です。後でお話しするように、株価については例外的に1つだけ高い確度で予測できることがあるのですが、それ以外の予測は難しいです。
たとえば、「今年の年末の日経平均はいくらになっているのか?」「今年、爆上げする銘柄は何か?」といった予測は、どのプロのアナリストが行っても大概外れます。現実に、プロのファンドマネジャーが運用する投資信託の6~7割は、パフォーマンスで平均株価に負けているという分析データもあります。
つまり「3万円を超え、これから日経平均がどうなるのか?」という予測は、まず当たらないというのがアナリスト界隈の常識です。一方で予測とは別に、予感として「これからひどいことが起きそうだ」と私のような中高年のビジネスパーソンは感じてしまう。その理由は、過去によく似た「強烈な体験」をしているからです。
前回、日経平均株価が終値で3万円を超えたのは1988年12月7日のことでした。1988年はバブル経済の真っ只中で、4月から10月までの約半年間、日経平均は2万7000円から2万8000円の間のボックス相場で膠着していました。今思い起こすと、あたかもそこから上に上がるのが怖かったかのようでした。そのトレンドが崩れたのが11月で、そこから株価の上昇が始まり、1988年12月に初めて3万円台に到達します。
そして翌1989年は、株価はもみ合いながらも、年間を通じて一貫して上昇し、1989年12月29日の大納会で、運命の3万8915円87銭という、史上最高値を記録します。この年のクリスマスイブは、バブル熱狂のピークの日曜日でした。都内の高級フレンチレストランは、1人3万円の特別ディナーコースしか注文できないにもかかわらず、本当に予約がとれない状況でした。しかもそこでは、高級ワインをボトルで追加注文するのが、お客としてのマナーだったと記憶しています。