格好だけの防護服を着てコロナ消毒
未知のウイルスと竹やりでの戦い

 そんな実態でありながら、依頼主も従業員もコロナに対する深い知識があるわけではないから、誰も現状を疑おうとしない。

「未知のウイルスに対して、会社はただ『戦え』というだけ。恰好だけの防護服を着て、まるで竹やりで戦っているようだ」――。佐々木さんにはそう感じられたという。

「正直言って、この仕事って意味があるのかなと疑問に感じていました。キャパシティオーバーで依頼に応えられず、『消毒崩壊』の状態。時間に追われちゃっているので、一つ一つの業務の質も落ちますよね」

 毎日寝る暇もなく、休みも取らせてもらえない。1日に7~8件の業務を入れられる日もある。そして、作業後に作業内容を説明するための報告書を書く必要があるが、時間がないため、その作業は休日にずれ込んだ。

「会社内には『コロナで稼いじゃったもん勝ち」という空気が蔓延し、リスクよりも経済優先を感じました」

給料が高い安いの問題ではなく
危険に対して見合わない

 あまりに消毒件数が多く、流れ作業のような日々の中で、佐々木さんは何が何だかよく分からなくなってしまったという。

 深夜自宅に帰ると、気絶するように寝るだけ。クタクタで何もする気がしなかった。思わず涙が出てきた。

 コロナにいつ感染するか分からないという恐怖といつも隣り合わせだった。会社からは、感染した場合の連絡経路や脱毛、疲労感などの後遺症についての説明はあったものの、感染してしまったときの会社としての保証については何も説明がなかった。

 給料が高い安いの問題というより、危険に対して見合わない。「もう無理」だと思った。