日本銀行日銀はなぜ3月に「金融緩和点検」の結果を公表するのか。その真意を考察する Photo:PIXTA

物価目標達成失敗の批判に先手
コロナ後の政策を仕切り直しへ

 日本銀行は「金融緩和の点検」を行ない、3月の金融政策決定会合でその結果を公表する予定だ。

「金融緩和の点検」をこのタイミングで打ち出した背景には、コロナショック後に物価上昇率が大幅に下振れたことで、2%の物価目標達成失敗への批判が改めて高まること、もはや2%の物価目標達成ではなく、デフレ回避のために思い切った緩和策を実施すべきとの意見が高まること、に先手を打つ狙いがある。

 また、コロナショック前には国債、ETFの買入れペースは明確に削減され、事実上の正常化が進められていたが、コロナショック後は削減が一巡してしまっている。そこでさらなる削減ができる環境を整え、いわば仕切り直しをする、といった狙いもあるだろう。

 さらに、日本銀行はコロナショック後に、「2%の物価目標達成に向けたモメンタムは一旦失われた」として、物価目標達成に基づく通常の金融政策運営を一時停止する一方、特別オペを打ち出して、企業と雇用を守る政府の政策を側面から支援する措置に注力してきた。

 コロナショックの経済、金融市場に与える影響が弱まる中、異例のコロナ対策から通常の金融政策に戻すための仕切り直し、という意味合いも「金融緩和の点検」にはあるのではないか。この3月は、日本銀行が異例のコロナ対策を初めてから1年、という区切りの時期でもある。

黒田総裁は否定するが
実際は「副作用対策」ではないか

 総裁は、「副作用対策ではない」としたが、実際は副作用対策となるのではないか。筆者は、「金融緩和の点検」を踏まえて日本銀行が打ち出す措置は、「柔軟化=副作用対策=事実上の正常化策」になると考えている。