2012年7月に刊行された『世界を変える偉大なNPOの条件』が静かなブームとなっている。アメリカでも強い存在感を持つ12のNPO組織が、社会を変えるために、具体的に何を、どのように実践しているのかを分析した本書は、日本の関係団体に対して強いインパクトを与えている。前回に引き続き、本書の訳者でもある服部優子さんに、本書の説く新しい価値観を日本に導入するにはどうしたらよいかを語ってもらった。
前回は、本書の内容が普及すれば、日本にも新しい価値観が広まるきっかけになるのではないかと書きました。
NPO関係者の方々が偉大なNPOの6つの原則を通じて社会を変える方法を学習、実践していただくだけでなく、政府セクターや民間セクターで活躍するみなさんが、それぞれの立場で偉大なNPO的価値観を共有し、日本社会を変革していく力になっていただければ、日本はもっと生きやすい幸福な国に生まれ変われると話しましたが、今回はもう少しミクロ的な視点から考えてみたいと思います。
新しい価値観が日本に広まる好機
日本の社会経済の先行きが厳しい状況には前回触れましたが、厳しい状況をもたらす要素は他にもあります。すでに変化が起きている日本の労働市場です。情報技術の発展のおかげで情報の価値に大きな変化が起き、今やネット検索すれば答えのある問題は誰でも簡単に入手できます。そのため多少の専門知識を持つ人材の価値はどんどん下がっています。単に知識を持つだけの専門職では仕事にならない時代に突入しているのです。
一方、単純労働だけでなく技能労働についても変化しています。生き残りをかけた日本企業は、コストが安く教育の進んだ新興国の労働力を今後ますます活用していくでしょう。もちろん、専門知識や技術に加え、マネジメント能力を合わせ持つエリート人材は、これからも国内外で活躍の場はあるはずです。しかし、多くの日本人は、今より低い賃金で働かざるを得ない時代がくることは確実です。