キャリアを考えたこれからの人材育成

聖光学院が担う今後の役割と「2つの懸念」各界の第一線で活躍する卒業生を多数輩出する聖光学院。オイシックス創業社長の高島宏平氏(上)や、JAXA宇宙飛行士の大西卓哉氏(下)らが母校を訪れ、後輩に特別講義を行った 写真提供:聖光学院

――「聖光アカデミア」というのはどういうものですか。

工藤 聖光学院を卒業した研究者の集まりです。他にも、卒業生の同業種のコミュニティーは増えていて、霞が関に勤める卒業生の集まりである「聖光霞ヶ関会」、弁護士の会の「聖光法曹会」、最も大きいのが「聖光学院医師同窓会」です。ここの会員数は1000人を超えています。

――在校生が自分のキャリアを考えるにはいいですね。

工藤 最後の担任だった時に高3だった高島宏平(オイシックス創業者)くんは、当時から企画力があった。東大アメフト部出身でスポーツ関連ビジネスを手がける巨漢の三沢英生くん、そして野球への夢を追って四国アイランドリーグplusの理事長と日本独立リーグ野球機構の事務局長を務めている弁護士の坂口裕昭くんらを見ていて思うことがあります。

 高島くんと三沢くんは東大理Iから修士課程に進みますが、それぞれマッキンゼー、ゴールドマン・サックスというコンサルティング会社に入ってしまう。メーカーの技術者とでは待遇の差が開いてしまっている。僕も驚いたのですが、研究職を採らない企業も増えてきているらしいですね。理系、理系と言っている割には、昔ながらの工学部の機械や電気に行こうとするモチベーションが下がっています。

――これからの人材育成の方向性が問われますね。

工藤 将来的に人口が少なくなっていきますが、それなりの部分で稼げるかどうかということです。世界の中で稼ぐことができる、そういう若者を作らなければなりません。例えば、イスラエルは小さな国ですが、すごく豊かです。それは、世界でみんなが稼いでいるからです。それを日本の少子高齢化社会の中で実現するようにしないと、この国の将来はないと思います。そのことを本当に考えてやれるのは教育だし、私学だと思います。