カフェカップでいただく、リッチなハイボール
さっそくリッチハイボールが到着した。リッチハイボールは、ミニボトルに入れられ、氷の入ったカフェにあるようなプラスチックカップとともにレーンを流れてくる。「予約」の札をつけて、颯爽と流れてくる光景を見ると、「くら寿司ロマンスカー」とか「くら寿司ライナー」と名付けたくなってしまう。
“リッチ”という形容詞がついたハイボール。何がリッチなのかわからないまま、とりあえず出世祝いってことだよね?とカフェカップに注いでいく。
もしかして、昼から寿司屋で酒を飲むことをためらう人々に考慮して、あたかも「これ? カフェオレですけど?」と演出できるように、こんなカップで提供してくれているのだろうか。スターバックスにこのカップをもって紛れ込んでも、きっと誰もこれをハイボールだとは思わないだろう。
早速、ゴクリン、ゴクリンと大きな一口で飲んでみる。あ、これは正真正銘のリッチなやつですわ。
飲んだ瞬間、柑橘がそよ風のように喉を通り過ぎていく。甘く優しく私を包み込んでくれるハイボールな彼は、スイートルームの住人に違いない。まるでハイボール界のローランド。
おや? なんだかくら寿司が、一瞬にして浦島太郎が軟禁された高級料亭・竜宮城に見えてきたぞ?
亀に乗ってきた記憶はないが、あまたなる魚たちに囲まれながら美しいリッチハイボールにもてなされ、ほろ酔いで楽しいひとときを過ごせそうだ。
(本原稿は、酒村ゆっけ、著、『無職、ときどきハイボール』の原稿を一部抜粋・編集したものです)