ワクチン接種目前に
兵士に言われた衝撃的な一言

混乱する接種所の様子混乱する接種所の様子 Photo by Y.T.

 そうして寒い中待っていると、中から軍服を着た男性が拡声器を片手にやってきた。そして、言い放った。

「イスラエル国籍を持つ人だけがワクチンを受けられる。外国人は今すぐ帰りなさい」

 彼の説明によれば、外国人の登録に使っていたサイトがダウンしてしまい、「これ以上登録ができないから」だと言う。当然、パスポート持ちの人々は文句を言うが、「仕方ない」と言ってみんな帰っていった。

 ハンガリー人の女性と私はその場で立ち尽くしてしまった。

 そこに軍服の男性が近づいてきて、念押しされた。

「聞いていなかったのか?サーバーが落ちたから、外国人はダメだ」

 すると、黙っていた彼女が急に大声で反論し始めたのだ。

「私はユダヤ人だ。なぜ、私には権利がないのか」と必死の形相である。

 ここまで寒い中、ずっと待っていて、ワクチンも何ももらえずに帰るわけにはいかない、というわけだ。彼女の気持ちはよくわかる。

 成り行き上、私も彼女を応援して交渉することになった。

 そして、数十分、頑張ったら、最後は係員も根負けしたのか、私も含めて、一緒に中に入れてくれたのだ。

「今回は特別だからな」と数回繰り返し言われた。

 諦めずに頑張るといいことがあるのは、この国の特徴でもある。

 係員の女性に自分の名前、パスポート番号、携帯番号を伝え、アレルギー反応などの簡単な問診を受ける。予想に反して彼女はスマホで私の情報を入力している。

 先ほどの「サーバーがダウンした」という話は一体なんだったのだろうか。

 肝心のワクチン接種は針が入ったことにも気づかないうちに終わった。本当に拍子抜けだった。

「お疲れ様」と言われて、「次はちょうど3週間後に受けにこい」と言われた。

 今までの苦労が嘘(うそ)だったかのように一瞬で終わってしまった。送迎役を買ってくれたマタン君にお礼を言って家路を急いだ。