――インスリン用注射器は、通常の注射器に比べ、痛みも少ないと聞きますが…。

 注射針は針が細い方が痛みは少ないとされています。インスリン用注射器は普通の注射器よりも針が細いので、理屈上ではそうなりますね。

タニタ製の皮下脂肪厚計で
エコーの代用できるか

――インスリン用注射器によるワクチン接種は普及するでしょうか。また普及を阻害するとしたら、何が問題となりそうですか。

 先ほど述べたように、現在、宇治徳洲会病院では、エコーで皮下組織の厚さを計測してからワクチン接種しています。計測には20秒程度かかるので、どうしてもひと手間増えてしまいます。効率性を考えると、問題があるでしょうね。

 そもそも日本のワクチン接種は皮下注射が中心ということもあり、筋肉注射には慣れていない医療従事者が多いのが実情です。

 集会所などを利用した臨時のワクチン接種所などでは、エコーの使用は現実的ではないかもしれません。そこで、私が代用できるのではないかと考えているのが、タニタ製の皮下脂肪厚計です。これをエコー代わりに使用できれば、より簡易に使用できるため、可能性はかなり広がります。皮下脂肪厚計の精度については問題なさそうですが(※2)、実際に、これから最低100例くらいはきちんとデータを取って検証する予定です。

 また、当然ながら、本来5〜6回分としているのを、7回分とするのに、抵抗を感じる方もいるでしょう。実際、3月8日に各メディアで報道されて以降、「5回分と決まっているのに、なぜ、7回分取るのだ」という多くのお叱りの声も受けました。

インスリン用注射器5本のほか、通常の注射器で2本取れるインスリン用注射器5本のほか、通常の注射器で2本取れる 画像提供:宇治徳洲会病院
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 繰り返しますが、1瓶から取れる7本分はすべてインスリン用注射器というわけでなく、通常の長い針の注射器でも2本は取れます。なので、長い針が必要な人にもきちんと接種することが可能です。ワクチン供給が遅れ気味の日本にとっては、有益な情報だと思うのです。

 もっとも、ワクチンが潤沢に供給されれば、わざわざこのような「苦肉の策」をしないで済む話なのですが…。

※2:タニタの広報部は、ダイヤモンド編集部の問い合わせに対し「精度的にはエコーと遜色ないレベルですが、本来、皮下脂肪厚計は健康機器であり、医療現場で使用する医療機器としては想定していません。もし、医療機関などで検証するのであれば、データ提供などの面で協力したい」と回答している。

(監修/宇治徳洲会病院院長 末吉 敦)

◎末吉 敦(すえよし・あつし)
宇治徳洲会病院院長。日本循環器学会 循環器専門医、日本救急医学会 救急科専門医、日本内科学会 認定内科医。香川県出身、1985年3月岡山大学医学部卒。同年6月宇治徳洲会病院入職。循環器科部長、救急総合診療科部長(兼務)、心臓センター長(兼務)を経て、2004年11月副院長に就任、12年3月救命救急センター長を兼務、13年10月院長代行に就任、救命救急センター長・心臓センター長を兼務、15年1月院長に就任、救命救急センター長を兼務、現在に至る。