広告会社の元役員で今は年金生活を送るピーター・ボルニーさんは通常であれば、地球一周を目指すべく、航空会社のマイルで年間10万マイル以上を妻と共に飛行し、北朝鮮やタジキスタンなどの珍しい場所も訪れている。ようやく新型コロナウイルスワクチンの完全な接種が終わり、コロナのパンデミック(世界的大流行)で失われた1年を取り戻す決意だと話す。「私たちは家に閉じこもっていることにうんざりしている」。既にギリシャでの5週間の田舎暮らしやアフリカのサファリ旅行、スリナムとガイアナのジャングルへのトレッキングを予定している。ワクチン接種を受けたことで、「何も怖くない」と自信を持てたという。
隔離とズーム会議に明け暮れた1年を経て、新たにワクチンを接種した人の多くが同じように感じている。しかし、ワクチン接種を受けたからと言って、まだ自由に移動できるわけではない。ボルニーさんの場合、今年秋のギリシャ旅行を除き、そうした旅は2022年まで実現できない。このことは、ワクチンの普及と旅行再開への期待に関して誤解を生んでいる。世界のほとんどの国では、旅行者に対する検査や検疫規則を解除する準備はまだできていない。結局のところ、まだパンデミックは続いており、世界の人口のごく一部しかワクチンを接種していないためだ。
西欧の大半をはじめとする多くの国は、まだ米国からの旅行者を受け入れていない。一部の地域では感染者が増加している。例えばイタリアでは、新型コロナウイルスの変異株の出現を受け、大部分の地域が再びロックダウン(都市封鎖)に踏み切っている。また、特に公共の場で知らない人たちと一緒にいるときなど、当面は対人距離を確保する「ソーシャルディスタンス」措置やマスクの着用が必要になる。