プーチン大統領を蹴るナワリヌイ氏を描いた山車
ロシアと欧米との対立激化で、今後懸念されるのが通貨ルーブルの下落だ。ロシア経済にどんな影響を与えるのか Photo:NurPhoto/gettyimages

ナワリヌイ氏逮捕で
欧米はロシアの追加制裁へ

 ロシアの野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が今年1月17日、治療を受けていたドイツからロシアへと帰国した直後に逮捕された。その後ロシアの裁判所は、2月2日にナワリヌイ氏の過去の有罪判決について執行猶予を取り消し、禁固3年6ヵ月の刑を即時に執行するという決定を下した。すでにナワリヌイ氏は刑務所に移送された模様だ。

 一連のナワリヌイ氏に対するロシア当局の対応を、欧米諸国は強く非難している。欧米社会が伝統的に重視する民主主義や人権などの価値観に、ロシアの対応が反しているのが主な理由だ。ロシア当局は内政干渉であるとして欧米諸国による非難に反発しているが、一方でこの問題を通じて欧米との対立が激化することを望んでいるわけではない。

 ロシアは2014年のクリミア危機(ロシアがウクライナ領であったクリミア半島を併合したことに、欧米諸国が反発したこと)以降、欧米から経済制裁を科されている。これが原油価格の低迷とともに、ロシア景気の長期停滞の主因となっている。さらに2020年以降は、各国と同様に新型コロナウイルスの感染拡大がロシア経済の重荷と化している。

 とはいえ、9月に総選挙を控えて支持率(図表1参照)の引き上げに苦慮するプーチン大統領は、ナワリヌイ氏の活動を野放しにできない。欧米から追加制裁を受けるのもやむなしと判断し、ナワリヌイ氏に対して強硬な対応に出た模様だ。実際に欧米は相次いで対露制裁を強化したが、今のところ高官の渡航制限や口座凍結などに限定されている。

ロシアにとって
最大のリスクは通貨の下落

 トランプ前大統領は、論点ごとに是々非々で対応するという外交戦略をとったため、ロシアや中国にとってはある意味で交渉しやすい相手だった。しかし、年明けに就任した米国のバイデン新大統領は、民主主義や人権といった伝統的な欧米流の価値観を重視するため、外交戦略にはイデオロギー的な性格が強く反映されているという特徴がある。

 権威主義的な性格を強めるロシアと中国にとっては、トランプ前大統領よりも欧米流の価値観を重視するバイデン新大統領のほうが厄介だ。実際にバイデン新大統領は、欧州との協調を重視する観点から対露制裁を強化した。今後もロシア当局が政治問題などで欧米流の価値観に反する対応をすれば、対露制裁は一段と強化される恐れがある。