お直しコンシェルジュで国内外に店舗展開、しかし思わぬ落とし穴
「ウエストのサイズをちょっと直したい」「虫食いやほつれがあって着られない」など、ちょっとした衣服の補修、手直しをしてくれる「お直しコンシェルジュ」というサービスがある。
これを展開するのは、仙台に本社を置くビック・ママだ。東北や首都圏、大阪、広島など全国の駅ビル・デパートなど商業施設に70店を展開している。3~4坪の小型店が中心で、ファストフードのように誰もが気軽に立ち寄れる。
メンズパンツのウエスト直しやズボンの裾上げなど洋服はもちろん、他にも、バッグ、ベルト、靴、アクセサリーなどの修理も手がけている。
「イラスト入りのメニューを作り、明確な料金体系にしたのは業界でも早い方でした。ただ、価格で勝負しているわけではなく、同業の最大手チェーンより1割安い程度です」と、同社社長の守井嘉朗(51歳)は語る。
海外へもお直しコンシェルジュを広めようと、2014年にはシンガポールに進出し、現地での高島屋の拡大に合わせて最盛期は9店ほどに達した。同じように高島屋がベトナム・ホーチミン市に出店するとともに同社も16年に進出、続いて18年にはタイ・バンコクにも店を出した。
守井も当時は強気で、タイでさらに10店舗まで増やし、海外店舗を併せて20店に倍増しようと考えていたが、思わぬ落とし穴にはまってしまった。シンガポールで運営を任せていた現地責任者が多額の横領をしていたことが発覚し、2020年に撤退。本社から貸し付けていた3億円弱を損金処理することになった。
「横領を見抜けなかった。管理が不十分だったとしか言いようがありません。日本での管理の延長線上でシンガポールの会社も考えていましたが、甘かった。海外ではこういうことも起こるのだと中小企業の経営者の皆さんに知ってほしくて、恥をしのんでお話しします」と守井は悩みを捨て、すっきりした表情で語り出した。