3月に発表された公示地価では、東京・銀座、大阪・心斎橋や道頓堀の下落が目立った。新型コロナウイルス感染拡大によるインバウンド需要の“消失”が大きく響いた。日本人の外出自粛も続く中、各地の繁華街の賃料や空室率はどう変化し、水面下でどのような動きが起きているのか解説する。(CBREシニアディレクター 奥村眞史)
インバウンド需要は“消失”したが
出店の機会をうかがう動きはある
東京・銀座7丁目がマイナス8.0%、大阪・道頓堀の「づぼらや」跡地はマイナス28.0%――。国土交通省が3月23日に公表した2021年1月1日時点の公示地価には、新型コロナウイルス感染拡大と、これに伴うインバウンド観光客“消失”の影響が如実に表れています。
CBREの主な業務の一つが、銀座や心斎橋といった全国の主要な商業地への出店を希望する物販・飲食・サービス業の店(テナント)の出店支援です。そのため、各都市の繁華街がある商業地の賃料水準や、テナントの入退去の状況を調査しています。
コロナ禍やインバウンド消失の影響は甚大で、公示地価に表れたように、賃料水準も下落傾向です。一方で、テナントの出店ニーズが全くなくなったわけではなく、同じエリアでも立地によっては以下のような3つの出店希望があるのも事実です。
1.賃料が割安になったところを狙っているテナント
2.消費スタイルの変化で業績が好調なテナント
3.既存店が退店を迫られ、同一エリア内での移転を検討するテナント
本稿では、エリア別の賃料水準や、テナントの入退去の最新動向について論じていきます。