新型コロナ拡大を機に日本でも急速に広まった「テレワーク」。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。
これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ同社執行役員の髙橋豊氏が執筆した『テレワーク時代のマネジメントの教科書』だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。
前回、テレワーク下では、個別対応の新人教育が難しくなっていくというお話をしました。
新人がそれぞれどのような能力をもっているのか、オンラインツールでのやりとりだけでは見抜き切るのがむずかしく、これまでのように「機会の平等主義」で全員に同じOJTを行おうとすれば、高い能力を持っている新人の存在に気付くことすらできないかもしれません。
もちろん、トレーナーが指導のスキルを上げなければならないのは大前提ですが、部下の方もより能動的に意識を変えなければテレワークでのOJTは成り立ちません。
黙っていても教えてもらえない
昨今の若手は、すべて教ええもらうのが当たり前と考えて入社してくる傾向が強いと言われます。その原因として考えられるのは、学校の先生や親が「失敗してこい」と放り出したり、「自分で見て学べ」と言ったきり放っておいたりせず、すべてにおいて丁寧に教える傾向がある、ということではないでしょうか。とりわけ、効率を重視する塾や予備校では常に「最短距離で絶対に成功する方法」を教えてくれるものです。
しかし、現在の世の中は誰にも予測がつかないほど複雑化し、簡単に手に入る“正解”などあり得ません。それでもそうして育てられてきた若者たちは、当然のように「正解は教えてもらえるものだ」と思い込んでいる人が多いのです。
テレワーク下では、これまで以上に、黙っていては気づいてもらえないことも増えます。これまでのように「黙っていたら教えてもらえる、教えてもらえないなら辞める」というスタンスではなく、自分から貪欲に学びにいくというスタンスに変えなければ生き残れないということを、上司は最初に新人に伝えなければなりません。
テレワークになるということは、それだけ大きく環境が変わるということなのです。