新型コロナ拡大を機に日本でも急速に広まった「テレワーク」。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。
これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ同社執行役員の髙橋豊氏が執筆した『テレワーク時代のマネジメントの教科書』だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。

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新人が辞めてしまう問題は一種のジェネレーションギャップ

 コロナ禍によってテレワークが導入される前の段階で、新人教育は大きく2つの課題を抱えていました。

 ひとつは、昨今の全般的な傾向として「手取り足取り教えてもらうのが当たり前」だと思って入社してくる若手が多い、ということです。

 ところが、彼らが社会人になって足を踏み入れる会社という世界には、「俺の背中を見ろ!」と言うだけで面倒も見ない、失敗したら叱りつけるという上司がたくさんいます。この“上司”というのは、主に団塊ジュニア世代です。ベビーブーマーでもあるので学生時代は人数が多すぎて細やかな配慮などしてもらえず、入社はバブル崩壊後だったので経費削減のために研修に予算を割いてもらえず、見よう見まねで仕事を覚えてきた世代、といえば身に覚えのある方もたくさんいらっしゃるでしょう。

 この世代の上司たちが、自分がされてきたことを20代の若者たちを相手に繰り返しているわけですから「仕事を教えてもらえないなんておかしい」という理由で辞めていく新人が続出するのも当然です。これは、一種のジェネレーションギャップでもあります。そのことを上司はまず意識しておく必要があります。

個人の能力に合わせたOJTが必要という流れだったが

 もうひとつの問題は、多くの会社で新人の採用数が多すぎて、個別の能力に応じたOJTができていないという問題です。そもそも、現在の子育てや学校教育が「個性重視」であるのに対して、会社組織には昭和時代の「金太郎飴方式」を良しとして、均一的な人材教育をしたがる側面が色濃く残っています。人事部も「機会の平等主義」に縛られすぎて、全員に同じOJTをしなければと考えがちなので、結果として能力の高い新人が、物足りなさから辞めてしまうということが起こっているのです。

 これらの問題を鑑みて「新人の離職を防ぐためには、もっと個人の能力に合わせて、手取り足取り丁寧にOJTを行わなければならない」という流れが生まれていたのが、テレワーク導入直前の状況なのです。

テレワーク下では個別対応のOJTにも限界がある

 しかし、個別対応による丁寧なOJTを……という理想を掲げられたのは、みんなが同じ場所にいてお互いに顔を見ながら仕事をするという前提があったからでしょう。トレーナーは、新人の顔を見れば「教えてもらえなくて困っているのだな」「不安を通り越して、嫌気が差しているのではないかな」または、「ずいぶん余裕があるな、彼は本当はもっとできるんだな」などと察することができました。しかしテレワークが導入されたことで、上司は部下の様子が見えなくなったのです。これまでできていた細かな配慮や精神的なサポートも難しくなってきます。

 具体的にどのようにすればよいのか『テレワーク時代のマネジメントの教科書』にも書いておりますのでぜひ、参考にしてみてください。