中国はなぜ原発処理水の海洋放出に反対するのか、専門家が指摘する5つの理由福島第一原子力発電所で汚染された水を溜めているタンク。2016年撮影 Photo:Christopher Furlong/gettyimages

日本政府が4月13日に発表した「処理水の海洋放出」の決定は、中国にも波紋が広がった。中国の専門家らも反発の声を上げているが、中国の原発も放射性物質を排出している。それでも、なぜ日本の対応は不安視されているのか。複数のレポートから客観的にその不安の原因を探った。(ジャーナリスト 姫田小夏)

中国の専門家らも批判する5つの根拠

 福島第一原発におけるデブリの冷却などで発生した放射性物質を含む汚染水を処理し、2年後をめどに海洋放出するという決定を日本政府が発表した。これに、中国の一般市民から強い反対の声が上がった。

 中国の原発も環境中にトリチウムを放出している。にもかかわらず、日本政府の決定には、中国の政策提言にも関わる専門家や技術者も声を上げた。その主な理由として、下記の要因を挙げている。

(1) 10年前(2011年3月)の福島第一原発事故が、チェルノブイリ原発事故(1986年4月)に相当する「レベル7」の事故であること
(2) 排出される処理水が、通常の稼働下で排出される冷却水とは質が異なること
(3) 事故の翌年(2012年)に導入した多核種除去設備(ALPS)が万全ではなかったこと
(4) 日本政府と東京電力が情報やデータの公開が不十分であること
(5) 国内外の反対にもかかわらず、近隣諸国や国際社会と十分な協議もなく一方的に処分を決定したこと

 さらに、復旦大学の国際政治学者である沈逸教授はネット配信番組で、国際原子力機関(IAEA)が公表した2020年4月の報告書(*1)を取り上げた。

*1 Review Report IAEA Follow-up Review of Progress Made on Management of ALPS Treated Water and the Report of the Subcommittee on Handling of ALPS treated water at TEPCO’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Vienna, Austria 2 April 2020

 報告書によると、IAEAの評価チームは「『多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(ALPS小委員会)』の報告は、十分に包括的な分析と科学的および技術的根拠に基づいていると考えている」としている。しかし、同教授は「それだけで、IAEAが処理水の海洋放出に対して“通行証”を与えたわけではない」とし、この報告書に記載されている次の点について注目した。