楽天グループが中国・テンセント(騰訊控股)の出資を受け入れたことで、日本政府は「監視」を強化する。米国政府と連携し、問題があれば勧告や命令を出し、それに従わない場合は売却命令を出す。だが、事前規制をすり抜けた中国企業の投資に対し、事後の監視も手薄な現実が透ける。2020年5月に施行したばかりの改正外為法の抜け穴が目立ってきた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
楽天の中国出資受け入れに
日本政府の警戒はピーク
「日米首脳会談の直前のタイミングで中国の資本を受け入れるなんて、普通の経営者ならやらないと思います」
ある日本政府関係者は、中国のテンセント(騰訊控股)から出資を受けた楽天を強い言葉で非難した。名指しこそ避けているが、三木谷浩史会長兼社長に対する批判も辛らつだ。
楽天は3月12日に日本郵政、テンセント子会社、米ウォルマート、三木谷氏の親族名義の会社から合計2423億円を調達すると発表。このうちテンセントによる出資は3月末に完了し、657億円、出資比率3.65%が払い込まれた。
楽天の発表直後から、トランプ前大統領の厳しい対中路線を継続するバイデン米政権の懸念が、国家安全保障局(NSS)をはじめとする日本政府の関係部局に伝えられたという。4月16日の日米首脳会談に前後して、政府内部の楽天への警戒感が一気に高まったというわけだ。
そもそも政府は2020年5月の改正外為法の施行で、安全保障上の観点から重要な日本企業への外国人投資家の株式取得を厳格化したはず。だが、「純投資」を主張するテンセントは、いとも簡単に外為法の事前規制をすり抜けた。
冒頭の政府関係者の衝撃は大きく、楽天に対する監視を慌てて強めている。だが、外為法には「監視」という規定はなく、事後の監視の手立ては限られるのが実態。政府内部のいら立ちは募るばかりだ。