「融通が利かなすぎる人」を動かすには、どうしたらいいのかPhoto: Unsplash

規則を順守するのは大切なことではあるが、大局的に見たらどうでもいいようなことにこだわる人物がいる。「急がないと商機を逃す」というような場合ですら、例外を認めず、通常の手順を踏むことを求めてくる。どうにも融通が利かない。「どうしてもっと柔軟に判断できないんだ!」とイライラするが、相手の言っていることは間違ってはいない。こうした人物を動かすにはどうしたらよいのだろうか。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

規則にこだわり、けっして例外を認めない

 いいかげんな人物も困るが、融通の利かない人物も困りものである。

 ある営業担当者は、取引先から連絡があり、今売り込み中の案件で、先方の工場にこれから一緒に行ってくれないかと言われた。もちろん行くしかない。そこで、急いで出張届を書いて担当部署に提出し、念のため上司に出張に行く旨を伝えると、こう言われたという。

「決裁が下りてからにしてください、それが規則ですから。それに関連資料が添付されていませんね」

 先方は今すぐ出かけるつもりだから、関連資料を作成する余裕はなく、決裁が下りるまで待っている時間などない。それに、この出張が認められないことはあり得ず、事後決裁でまったく問題ないのに、どうにも融通が利かない。

 いくら説明しても上司が納得してくれないため、この担当者は「こんなムダなことをしている暇はない」と考え、出張届を引っ込めて、急に体調が悪くなったことにして早退し、私用として取引先の工場に向かったという。このようなバカげた対応をする融通の利かない人物はどの職場にもいるものだが、それが上司となると何とも厄介だ。