他人の目を意識せず、自分軸で生きる

日本でも今年4月に発売されるやいなや、ネット書店や全国書店で売り切れ続出となった『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』や、東方神起ユンホの愛読書として知られ、日韓でベストセラーになった『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社刊)、BTSのJUNG KOOKの部屋に置かれていた『私は私のままで生きることにした』(ワニブックス刊)をはじめ、他人の目を意識するのではなく、自分軸で生きることを説くエッセイに共感の声が集まっている。

こうした韓国の癒し系エッセイは、自己啓発本の一種ではあるものの、いわゆる“成功の秘訣”が書かれているわけではない。著者は有名企業の創業者やオリンピック金メダリストなどではなく、20~40代の会社員やイラストレーターが中心だ。身近にいそうな人々が過酷な現実を乗り越えて、自分らしさを手に入れるエピソードが読者の心をつかんでいる。

手書きのメッセージを街中に貼り付けて…

『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』の著者クルベウは、SNS発の人気作家だ。両親にはテコンドーの選手になることを期待されていたが、高校2年生のとき、椎間板ヘルニアが原因で断念。代わりに20代前半の6年間、ファッションECサイトを運営するが、事業に失敗。1年間誰にも会わず、コンビニで深夜アルバイトをしていたある日、「でも、よくがんばったね」という言葉をテレビで偶然耳にして、思わず号泣したという。

つらい時期に説教やアドバイスをされることは多かったが、もっとも聞きたかった“いたわりの言葉”をかけてもらったことがないと気づいた彼は、自分の心を癒すため、そして、癒しを必要とする誰かの心に届くように、手書きのメッセージを電柱や壁、ガードレールに貼るなどの活動を開始。しかし、無断の貼り紙を警察にたびたび注意され、やがてSNSを利用するようになったという。