K-POP界にもファン多数

そんななか、クルベウの「心配しないで」という詩を、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』のヒロインとしても知られる女優兼、人気歌手のIUが、インスタグラムでリポストした。これをきっかけにクルベウ氏は一気に知名度が上がり、フォロワーが急増。さらに、2005年に出版された初のエッセイ集『心配しないで』(日本語未翻訳)を、BTSのJ-HOPEが「メンバーのJINにおすすめしたい本」にセレクトしたことによって、ファンの間で大きな話題になった。現在もクルベウの著書の一節を抜粋して、BTSの公式アカウントに応援メッセージを送るファンが多い。

ほかにもONEUSのコンヒ、SIGMAのZ-UKが『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』を愛読書として挙げ、THE BOYZのハンニョンが『今日ほど私が嫌になった日はない』(2018年/日本語未翻訳)の一節をSNSで紹介するなど、K-POP界に多くのファンを持つクルベウ。韓国でのあるインタビューで、彼はこう語っている。

「私が書く文章は、私たちがすでに知っている言葉です。ただ、誰もがとても慌ただしく生きている現実の中で、言えなかった言葉を私が代わりに言うことによって共感していただいているのだと思います」

ずっと前から知っていたようで、うまく言語化できていなかった思いを伝えてくれるところが人気の秘密だ。

今、幸せになることを選択する

クルベウは作家として名が知られてからも、しばらくは幸せを感じられなかったというが、それは「幸せを未来に設定している」ことが原因だと気づいたという。

「ほとんどの人が“大学に入れたら幸せ”“就職できたら”“作家になれたら”幸せになれるだろうと考えています。幸せが未来の目的になっているのです。これでは幸せになれるはずがありません。それほどの完璧な瞬間は、人生において一度あるかないかです。だから、今、幸せになれることを選択すればいいのだと考えるようになりました。常に幸せというわけにはいきませんが、完璧な幸せを待たずに、そのときのベストな幸せを選択していけば、幸せを感じられるのではないでしょうか」

村上春樹のエッセイに登場する、日常の“小さいけれど確かな幸せ”を意味する「小確幸」という言葉は、韓国でも数年前から浸透している。

幸せのかたちは本来、人それぞれちがうもの。他人と自分を比較しながら、大成功を目指してがむしゃらにがんばるのではなく、少しずつ自分ならではの小さな幸せを選びとっていく―。そんな生き方が改めて見直されているようだ。