昨年に続き、今年のゴールデンウィークもステイホーム。思い切り遊ぶこともできないまま、気づいたら休みが終わっていた、という人も多いのではないだろうか。
GW明けはただでさえ心身に不調を覚える人も多い。いわゆる「5月病」だ。なんだかやる気が出ない、会社に行きたくない、他人のちょっとしたひとことに傷つく、などモヤモヤした悩み抱えている人もいるだろう。
そんななか、「自分のつらい気持ちをを代弁してくれている」と話題の本がある。2021年4月に発売以降、1ヵ月経たずして3刷重版になるなど、売れ行き絶好調の『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著 藤田麗子訳)だ。
原著は韓国で2020年7月に発売。発売後5ヵ月で6万部を突破し、韓国の大手書店でもベストセラーランキング入り。「つらいときにひとりで読みたい」「低くなった自尊心を満たしたいときはこの本が役立つ」「誰が読んでも共感できる内容」と読者レビューが数多く寄せられ、日本版の読者からも「心が軽くなった」「このタイトルは私そのものだ」「大切な人にプレゼントしたい」などの共感、絶賛の声が相次いでいる。
今回は『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』の訳者で韓国在住の藤田麗子氏に、「あなたのままで大丈夫」と励ましてくれるような、「大丈夫系エッセイ」が韓国で流行している背景について聞いた。
「生きづらさ」を感じる韓国の若者たち
フリーライター&翻訳家
福岡県福岡市生まれ。中央大学文学部社会学科卒業。直近の訳書『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著)は発売4週間で3刷重版と好調。そのほかの訳書にチョン・ヨンジュン著『宣陵散策』(クオン)、ホン・ファジョン著『簡単なことではないけれど大丈夫な人になりたい』(大和書房)、パク・ジョンジュン著『Amazonで12年間働いた僕が学んだ未来の仕事術』(PHP研究所)、著書に『おいしいソウルをめぐる旅』(キネマ旬報社)等がある。第2回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」にて『宣陵散策』で最優秀賞受賞。
韓国人作家のエッセイが日本でも続々と翻訳出版され、人気を集めている。その内容は、「今のままで大丈夫」「ありのままの自分を愛そう」「がんばりすぎないで」といった、励ましやいたわりの言葉がつづられたものが多い。
韓国は、日本以上に学歴が重視される超競争社会だ。過酷な受験戦争を勝ち抜いて志望校に合格したあとは、就職活動に向けてスペックを積み、会社に入れば出世をめぐる競争が待っている。大企業に就職できたとしても、役員クラスまでのぼりつめることができなければ、40代でリストラに遭うことも珍しくない。
韓国では見えない将来に不安を感じ、恋愛や結婚、出産、マイホームなど、あらゆるものをあきらめる若者たちが増加。韓国の生きづらさを表す「ヘル朝鮮」(※地獄〔Hell〕+朝鮮。若者失業率が悪化し、自殺率はOECD加盟国1位、ますます格差が広がる現代の韓国を、身分制度の厳しかった朝鮮時代のようだと揶揄する言葉)などの造語が誕生するなか、「いい大学に入って、誰もがうらやむような大企業に入れば幸せになれるはず」という価値観が少しずつ変化している。