米国の電気技師や配管工は年収1500万円強!?なぜブルーカラー・ビリオネアは日本で「生まれにくい」のかAIブームで電気技師や配管工は年収1500万円強になるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「アメリカでは肉体労働者の給与が高騰するブルーカラー・ビリオネアと呼ばれる現象が起きている」「経理から配管工に転職して給与が3倍になったケースも」といった報道を見た。なぜだろうか?日本でも同じような現象が起きるのか気になる人も多いだろう。しかし、米国と日本では決定的な違いがあると考える。その理由とは?(未来調達研究所 坂口孝則)

AIブームで電気技師や配管工は
年収1500万円強になるのか

 いつもの革ジャンを着た米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが、先日のダボス会議にて、「AIブームは電気技師や配管工に6桁の年収をもたらす」と発言した。6桁だから10万ドルとしても日本円で1500万円強にもなる。

 AIと聞くと関連して伸びるのは半導体ばかりを思い浮かべがちだが、データセンターと電力の需要も急増している。さらに、オフィスビルとは比較できないほど高度な水冷・空冷システムも重要だ。そのデータセンターを建設するためには数千人の労働者が必要で、工期を守るためにも熟練工ほど奪い合いの状況だ。

 もう何十年も米国ではホワイトカラー(オフィスワーカー)が増え、ブルーカラーの数は減る一方だった。さらに、ベビーブーム世代が大量退職し、トランプ政策で移民の流入も抑え気味になったことから人手不足に拍車がかかっている。これが最近、注目される「ブルーカラー・ビリオネア」が生まれた背景だ。

 日本もそうだが、米国では四年制大学を卒業してホワイトカラーになるのが、ある種の成功ルートとされていた。しかし、現実的にはどうだろう。成功といえるのか。

 筆者は佐賀県出身で、いわゆる地方からの東京在住組だ。一方、地元には夫婦ともにトラック運転手で、庭付き一戸建てに住み、週末は仲間とバーベキューを楽しむ知人がいる。子ども同士も仲良しで、地元愛にあふれている。

 私はというと、週末まで仕事に追われてクライアントへの資料を作成している。昔からの友人は、近所にはひとりもいない。都会には奨学金や住宅ローンの支払いに苦しむオフィスワーカーが多く、最近は物価高にも四苦八苦している。果たして、地方のトラック運転手よりも成功している、幸せだと胸を張って言い切れる都会のビジネスパーソンは、どれほどいるだろうか。

 米国でも多くの学生が数万ドルの奨学金を抱えて卒業するという。返済に苦しみ、AIの発展で頭脳労働が奪われ始めていて、見合う職業に出会えない。いわゆる大卒プアというやつだ。一方、職業訓練校の学費は安く、期間は2年程度と短い。それでいて卒業後の就職率が高い。さらに、電気技師などの初任給がホワイトカラーを上回り始めている。

 ただし、人手不足が引き起こした賃金増のみがブルーカラー・ビリオネアを産んでいるわけではない。ここが日本との違いだ。