スコットランド議会選
一段と高まる独立論議
5月6日のスコットランド議会選挙では、分離独立を志向する勢力が議席の過半数を制した。これを受けて、スコットランド自治政府のスタージョン第一首相は、独立を巡る住民投票は「やるかやらないかではなく、いつやるかという問題」とジョンソン英首相に伝えたと報じられている。
スコットランド独立の動きの歴史は古い。2014年の住民投票では、僅差で独立反対派が勝利したが、英国のEU離脱をきっかけに、親EU派の多いスコットランドで独立の機運が再び高まっている。スコットランドでの世論調査をみると、昨年は独立支持派が優勢であったが、最近では残留派が優勢を取り戻すなど、揺れ動いている。
スコットランドでは、政治や心情の面で独立したい気持ちは強い一方で、実際の判断が揺れ動いている。これは、スコットランドが単独で経済的にやっていけるか、という懸念が根強いためだ。経済的にはデメリットしかなくても、英国民は住民投票でEU離脱を選んだ。これを踏まえると、スコットランドも独立に向けて走り出す可能性はあるが、独立によるスコットランド経済のダメージは、英国のEU離脱と比べてはるかに大きい。
以下にみていくように、独立したスコットランドは、財政と経常収支の両面で巨額の赤字を抱える小国となる。さらに、英国の政府債務を人口比に応じて引き継ぐと、同サイズの近隣諸国に比べて著しく大きな政府債務も圧し掛かってくる(図表1参照)。