コロナ禍を機に「デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する」と計画している経営者の方もいることでしょう。しかし、号令“だけ”が立派な経営幹部はいませんか。こうした経営幹部の大半は、「DX=デジタルを使ってビジネスをすること」と考えています。しかし、これは大きな間違いです。そもそも、既存の組織体制やビジネスの枠組みを維持したままDXを推進しようとしても、成功は得られません。では、DXを成功させるためにはどのようなアプローチが必要なのかを、ひもといていきましょう。(KADOKAWA Connected代表取締役社長 各務茂雄)
京セラのアメーバ経営というアプローチ
「日本企業のDXの取り組みは、欧米企業の取り組みと比較して遅れている」と言われています。しかし、日本企業の中でもすばらしいDXを実現している企業も数多く存在します。
そのひとつが京セラです。京セラは、60年以上の歴史がある「モノ作り(製造業)企業」です。
京セラでは「アメーバ経営」というアプローチを取っています。これは、同社の名誉会長である稲盛和夫氏の実体験から生まれた経営管理手法で、「会社経営とは一部の経営トップのみで行うものではなく、全社員が関わって行うものだ」という哲学が根底に流れています。
具体的には、組織を独立採算で運営する小組織「アメーバ」ごとに分割し、従業員は「自分のロール(役割)は何か」「小組織(アメーバ)の中で何をすべきか」を理解したうえで、業務に当たるのです。これにより、各メンバーは自分の仕事内容と役割を自覚し、仕事成果と利益の確保に責任を持つようになるというわけです。(参照 京セラコミュニケーションシステム 「アメーバ経営とは」)
では、組織を「アメーバ」にすると、DXを進めるにあたって、どんな利点があるのでしょうか。