DX,ファシリテーション
DXを成功させるためにカギになるのが「ファシリテーション能力」のある人材です Photo:PIXTA

現在、多くの企業が検討や取り組みを始めているデジタルトランスフォーメーション(DX)。しかし、世の中の流れに任せて「なんとなく」始めたために、課題が明確でなく、何も進まないまま時間だけが過ぎていくケースも少なくない。そうならないためのカギを握るのが、DXを推進するチームをまとめる「ファシリテーションスキル」を持つ人材だ。これまでに多くのファシリテーターを育成してきた、共創アカデミー代表取締役の中島崇学氏に、DXを成功に導くファシリテーションスキルについて聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)

有能な人材を集めるだけでは
DXは決して成功しない

――多くの日本企業がDXの推進に力を入れ始めている。しかし、その推進につまずく企業が少なくないのには、どんな要因が考えられるか。

組織共創アカデミー代表である中島崇学氏
中島崇学(なかじま・たかあき)
共創アカデミー代表取締役
NECで30年以上にわたり人事や広報を歴任。3000人の対話集会をはじめ全社規模の組織活性化施策を主導。近年は、組織開発や幹部人材育成に従事する一方で、一般社団法人やNPO法人を設立し、企業の課題解決に直結した実践的な独自のリーダーシップ・ファシリテーションプログラムを提供。

 コロナ禍で会社の前途に不安を感じ、変化が必要だと考え、差し当たってDXを始めようとする企業が増えている。しかし、それらの施策が経営企画部門、人事部門、技術部門など、それぞれの部門で推進されており、いずれも連携されずにバラバラになっている印象がある。

 こうならないためにも、経営陣が会社の今後の方向性を定め、その手段としてのDXと人的資源の強化を結び付けるところから始めるべきだろう。

 DXとは本来、社会の構造やマーケットが大きく変化する中で、組織やビジネスモデルを変革させることだ。しかし、多くの経営者は、デジタル化で利便性を追求し、数値で短期的な結果を追い求めようとしてしまう。それでは経営の大きな方向性から離れて、気づかないうちに手段が目的化して、DXと組織戦略が分断されてしまう恐れがある。

――DXの推進には、具体的にどのような点が成功のカギになるか。

「プロジェクトチームの作り方」と「経営層とのチーミング」が重要になる。そうでなければ、先ほど申し上げたような分断が起き、投資効率が低い状況に陥るからだ。

 DXを推進するチームには、変化する環境の中でトライ&エラーを通し、チームメンバーの入れ替えなどで収縮を繰り返すという“柔らかさ”を伴った生命力が必要になる。つまり、レジリエンスと呼ばれる変化対応力だ。そのためには、チームをつなげてDXを進めていく力、ファシリテーションスキルを持った人材が欠かせない。

 環境が刻一刻と変化する中では、多様な人材を活用しなければならないが、最初に“変革人材”を集めたら、その後は人材の入れ替えを行わない企業が多い。だからこそ、組織が硬直的になる。確かに、経営陣が変革組織を作ったら、それで安心してしまう気持ちもわかる。ただこれは、有能な人を集めたがゆえに、お互いに意見を言わなくなり、ミスがミスを呼ぶという悲劇にもつながりかねない。