東イスラエルでパレスチナ人とイスラエル警察の衝突が続いた結果、5月中旬からパレスチナ自治区ガザの拠点からロケット弾が放たれ、イスラエル軍が迎撃ミサイルで撃ち落とすという事態になっている。ここまで大規模な戦闘は7年ぶりだが、多くのイスラエル人たちは「いつものこと」と冷静だという。イスラエルの歴史的都市・エルサレムでは、ミサイルと共存する日常が当たり前だからだ。外国人がイスラエルで暮らすことに危険はないのか。(イスラエル国立ヘブライ大学大学院・総合商社休職中社員 徳永勇樹)
イスラエル国立ヘブライ大学。9人のノーベル賞受賞者と、7人のイスラエルの首相・大統領経験者を輩出し、あの才媛の誉れ高いアメリカの女優ナタリー・ポートマンも在籍していたなどイスラエル屈指の名門校である。『サピエンス全史』や『ホモデウス』で一躍世界的な作家になったユヴァル・ノア・ハラリ教授も本学で教壇に立っている。
日本人の留学先としては決してメジャーではなく、現在留学中の日本人学生は片手で数える程度しかいない。しかし実は、イスラエルは欧米への留学とは違ったたくさんの魅力あふれる地でもある。
ヘブライ大学の歴史
ヘブライ大学の英名は“Hebrew University of Jerusalem”。「ヘブライ」は、旧約聖書に登場するアブラハムの子孫を意味し、転じて、古代イスラエルに住んでいたユダヤ人を総称する言葉である。イスラエルの公用語も「ヘブライ語」と呼ばれる。そんなヘブライ大学は、英名の通りエルサレム市に位置する。
ヘブライ大学には文系キャンパスと理系キャンパスがあり、文系キャンパスがスコープス山の頂上、理系キャンパスは市の中心部に位置する。筆者が学ぶ文系キャンパスからは、イスラエルとパレスチナ(ヨルダン川西岸地区)を分ける壁がよく見える。「文系の学生は前線でエルサレムを守る盾になって、理系は必死に後方で兵器を開発する、そういう役割分担なんだよ」と笑うに笑えないユダヤジョークすら耳にする。
そんなユダヤ民族の名を背負う大学が設立されたのは1925年。開校最初の授業は、アインシュタイン博士による相対性理論の授業だった(アインシュタインはその後全ての財産をヘブライ大学に寄付している)。第3次中東戦争では激戦の舞台となり、そういう経緯もあり筆者はこの大学を「最前線の大学」と呼んでいる。