雇用主は労働者の確保に苦心している。これが労働コストの押し上げにつながり、米連邦準備制度理事会(FRB)は想定よりもかなり早い段階で利上げに踏み切る――。そう結論を早まらないでほしい。米労働省が4日発表した5月の雇用統計は、非農業部門の就業者数(季節調整済み)が前月比55万9000人増加した。大きな伸びだが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がまとめた市場予想(67万1000人増)には届かず、やや失望を持って受け止められた。4月の統計に続く下振れで、企業が人材の確保に苦慮している状況が改めて浮き彫りとなった。これには考えられる多くの原因があり、おそらく大半が同時進行的に起こっている。完全ではないが、想定される原因のリストはこうだ。子どもの預け先の確保が困難なこと、失業保険の特別加算延長により賃金の低い職種の魅力が低下したこと、新型コロナウイルス感染への根強い懸念、パンデミック(世界的な大流行)に伴う仕事の価値に関する考えの変化などが挙げられる。いずれも最終的には勤労意欲を損なう要因と言える。雇用主がこれに対抗するには、とりわけ賃上げなどを通じて、勤労意欲をそそる動機づけを強める必要がある。
FRBが米雇用統計に動じないわけ
人材難や賃上げだけではない、FRBが目配りする他の要因とは
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