FBIが警告している手口を紹介しよう。まず、海外の慈善団体や医療機器企業のメンバーと名乗る人からメールが来て、「コロナ禍で混乱が起きているので、仕事を手伝ってもらえないか、報酬は支払う」などと言ってくる。在宅ワークだから時間がある、さらには善意から「手伝う」と答える人も多い。OKした人に対し、まずは登録をするという口実で身分証明書などの画像を送らせる。

 そして、「マスクを購入する資金を指定の口座に振り込んでほしい」などと依頼してくる。「立て替えておいてくれ」と言ってきたら詐欺確定だが、この場合はなんと、本当に先に資金が振り込まれてくる。そして手数料を引いた額を振り込むように指示されるのだ。

 例えば、30万円振り込まれて、1割の手数料を引いた残りの金額を指示された口座に振り込む、といった仕事を頼まれる。言われた通りにすると、手元には3万円残る。送金が完了したら、また次のお金が振り込まれてくる……といった形で、濡れ手に粟と稼げるのだ。この場合、何が詐欺なのだろうか?

 これは、国際的な犯罪組織が一般市民をだまし、犯罪で得たお金をマネーロンダリングしているというのが真相だ。関係ない人間の銀行口座やビットコインなどの仮想通貨口座を経由することで、捜査機関が追跡できなくする目的がある。

 当たり前だが、マネーロンダリングに加担するのは犯罪になる。警視庁もマネーミュールについて注意喚起を促しており、コロナによるものではないが実際に日本で逮捕された人も出ている。

「お金を移動する」という依頼は、必ず断らなければならない。

最新コロナ詐欺事情 「30万円振り込まれた」「ワクチン+注射器が届いた」警視庁も、マネーミュールの注意喚起を行っている 写真:柳谷智宣
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