AMCのミーム株トレーダーが狂わせる企業理論Photo:Noam Galai/gettyimages

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

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 企業創立の原則は株主への責任であるべきか、それともより広範なステークホルダーへの責任であるべきか――企業理論の特徴の一つとして、アカデミックな場ではこうした議論が活発に繰り広げられている。

 だが、株価が非常に割高だというだけで株主から何十億ドルも調達することは、そのどちらにも当てはまらない。学者たちはオンライン掲示板レディットで映画館チェーン大手AMCエンターテインメント・ホールディングスの話題をフォローしたほうがいいかもしれない。同社が先週、新たな増資により8億1700万ドル(約894億円)を調達し、相当なフロス(泡)を生んでいることは――昨年9月以来、発行株数は5倍に増えた――企業理論では見落とされがちな第三の考察すべき領域をもたらしている。企業創立の原則は企業自身にある、というものだ。

 最も明白な企業の存在理由は、株主に利することである。株主価値をはかる基本的な指標に基づくとAMCは群を抜いており、株価は年初来2494%高となっている。ソーシャルメディアに精通したアダム・アーロン最高経営責任者(CEO)(ツイッターのハンドルネームは@CEOAdam)によるところもある。アーロン氏は株主特典として無料でポップコーンを提供したり、AMC株を買い、同氏を「シルバーバック」と呼ぶ自称「エイプス(猿から転じて空売り対象銘柄に強気な個人投資家グループ)」の一人とのインタビューに1時間を費やしたりしている。