政府が世界最大級の規模と胸を張った日本の新型コロナ対策予算。だが結果は、GDPの大幅減少となった。多額の予算を計上したのに経済活動がしぼんでしまったのは不思議だが、予算の中身を見ると、数々の残念な要因が浮かんでくる。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
名目GDPが22兆円減少したのは「不思議」だ
日本の2020年度の名目GDPは、前年比べて約22兆円減少した。もちろん、新型コロナ感染症のためなのだが、なぜこれほど減少したのか、私には不思議な感じがする。
新型コロナウイルス禍は、旅客運輸業、宿泊・飲食サービス業に大きな打撃を与えた。どこにも行くな、外で飲み食いするな、というのだから、当然である。
日本の産業別GDPの統計には旅客運輸業というカテゴリーはないが「運輸・郵便事業」のうち半分程度が人、残りの半分がモノを運んでいるとみられる。
コロナ前の運輸・郵便事業のGDPは29.9兆円、宿泊・飲食サービス業が13.6兆円である(内閣府「国民経済計算」コロナ以前の2019年の値)。すると、旅客運輸業と宿泊・飲食サービス業で計約30兆円だ。これらの産業は、1年間ずっと打撃を受けていたわけではない。
もちろん、これらの産業の所得の減少が他の産業にも波及して日本全体の所得を減少させるのだが、それにしても、30兆円産業の打撃で日本のGDPが22兆円以上も減少するのは、不思議な気がするのだ。