コロナ禍で定着したリモートワークで「Web会議疲労」、いわゆる「Zoom疲れ」が懸念されている。
米スタンフォード大学の研究グループは、Web会議に特有の疲労感の原因を分析。同時に解決方法を提案している。
一つ目の原因は「近距離で多数の視線に曝されること」。1対1ならまだしも参加者全員から同じ距離感で一斉に「見つめられる」ことは恐怖を生む。発話者の顔がズームされる設定も、至近で攻撃を受けているような錯覚を引き起こすという。
解決策は、表示を小さく、そしてディスプレーから離れることだ。ここでも社会的距離が必要らしい。
二つ目は「非言語的なコミュニケーション負荷の増大」だ。
対面の会話なら、アイコンタクトでコミュニケーションを補うことができるが、Web会議では、同じ効果をあげるために大げさに頷いたり、身振り手振りを交える必要がある。これでエネルギーを消耗し、認知的な負荷が増加する。
解決のためには、長時間の会議で「音声のみ」タイムを設けるといい。数分だけでも骨休めになる。
三つ目は「自分の鏡像を確認し続ける負担」だ。どうも人間は、自分を客観的にみると自らに手厳しくなるようだ。特に女性は自意識過剰になるあまり、ネガティブな感情を抱きやすいという。
これを避けるには、セルフ表示機能をオフにしよう。映えを気に掛ける負担もなくなる。
四つ目は「移動できないこと」。リアル会議なら発言中に立ち上がったり、歩き回ることもできるが、Web会議ではカメラ前から動けない。座りっぱなしの健康リスクは言うまでもない。
解決策は外付けカメラの利用や、定期的にビデオ機能をオフにして休憩を挟むルールをつくることだ。
日本ではさらに「仮想の上座」や「上司より先に退出しては失礼」など、妙な気配りで疲れが増し、辟易している人も多い。旧態依然の常識も「Zoom疲れ」の原因というわけ。
リアルとリモートが混在する新しい生活様式では、会議の運用ルールも改める必要がありそうだ。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)