【共通点1】やりたいことは、とことんやらせる

 たとえば、ロボットコミュニケーターの吉藤健太朗さん、通称オリィさんは、小中学校での3年半の不登校経験を経て、高校時代に世界最大の科学大会で栄冠に輝き、ロボット研究者の道を歩み始めました。

 自身も体験した「人間の孤独」を解消するというミッションの下、分身ロボット「オリヒメ」を開発し、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで身体的な自由を奪われている人たちの社会参加を可能にしました。その功績が認められ、青年の国民栄誉賞【人間力大賞】を受賞。アジアを代表する30歳未満の30名にも選出されたのです。

 そんなオリィさんの子ども時代を支えていたのが、「やりたいこと・好きなこと」である“折り紙”。オリィさんは、小学生のとき折り紙にハマって、ときには16時間も没頭して折り紙を折っていたこともあったそうです。

 しかし、本の通りにきちんとつくる折り紙は不得手で、一生懸命つくったものはシワくちゃ。ゴミと間違えられて先生に捨てられたこともあったとか。それでも好きで続けていたら、そのうち机も使わず折り目もつけずに、感覚だけで大人も驚くような立体的な折り紙が折れるように。しかもその立体成型が、後のロボットづくりに生かされていくのです。

 それだけでなく、3年半不登校だったときに、その孤独を救ってくれたのも折り紙でした。オリィさんという通称は、折り紙からきています。人とのコミュニケーションが苦手だったオリィさんが、初めて科学のオリンピックといわれる大会に日本代表として出場したときに、そのウエルカムパーティで、外国人との会話の糸口をつくってくれたのも折り紙。そしてなんと、そのときの会話が自分の生涯の使命に気づくきっかけになって、今の仕事につながっていったのです。好きなことが、思いがけない方向に人を運んでいくことがあるエピソードです。

 折り紙に16時間没頭は、かなり特殊な例ですが、オリィさんの親御さんは、それを妨げずに見守っていたそうです。きっと、折り紙が学校が楽しくない息子にとって大切なものだということを理解していたのではないでしょうか。まさに、「やりたいことをやらせて、見守る」代表例だといえるでしょう。

 子どもって、本来好奇心のおもむくまま行動し、大人からみたら何がおもしろいのかわからないことに夢中になったりしますよね。何かに没頭しているとき、いわゆるフローの状態になったとき、脳の中では、「ドーパミン」という神経伝達物質が放出されます。ドーパミンは記憶を司る海馬や情動に関連する扁桃体など、脳のさまざまなところに作用しています。