6月4日、一定以上の所得がある75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が可決した。そこで現役世代に知ってほしいのは、退職金や年金の受け取り方次第で将来の医療費負担を自分でコントロールできるということだ。逆に、年金の繰り下げ受給などによって老後の医療費負担が3倍になってしまうリスクが高まるなんてことも。今回の法改正を機に、そうした窓口負担の“罠”に知らぬ間にはまらないための知識を身に付けよう。(ファイナンシャルプランナー、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
75歳以上の医療費窓口負担が
1割から「2割」に
6月4日の参議院本会議で、一定以上の所得がある75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が可決した。大きなニュースとして取り上げるメディアは少なかったが、「定年後の生活ウォッチャー」の私としては、「ついに来たか!」と思いながら新聞紙面を読んだ。
わが家の同居高齢者(義父93歳、義母86歳、いずれも1割負担)を見ていると、入院しなくても通院と処方箋薬局での薬代で2人合わせて毎年10万円以上かかっている。高齢になると、大病を患わずとも高血圧で内科、白内障で眼科、膝が痛いから整形外科など、「ちょっとした定期的な通院」の数が増える。後期高齢者の年齢になると、夫婦で年10万円程度の医療費がかかると思っていた方がいい。
仮に1割負担の人の医療費が年間10万円かかっていたとすると、2割になると20万円になる。年金生活において、この10万円の負担増は影響が大きい。
法改正については、われわれがコントロールできることはほとんどない。しかし実は、退職金や年金の受け取り方次第で将来の医療費負担は変わってくるので、自分でコントロールできる余地は残されているのだ。詳しくは後述するが、このことは現役世代のみなさんにぜひ知っておいてもらいたい。