老後資金には本当に
「2000万円必要」なのか?
みなさんは、一昨年(2019年)の夏に「老後2000万円問題」というのがあったことをご記憶だろうか?当時のマスメディアは、これを大きく取り上げ、SNSでも大炎上したことがあった。当時から筆者は「2000万円問題などというものは存在しない」ということを主張してきたし、ダイヤモンド・オンラインにも当時、『「年金2000万円問題」で起こっている3つの残念な勘違い』(2019年6月25日付)と題して記事を書いた。
そこで書いた趣旨としては、
(1)話題の元になった報告書は本来の目的がゆがめられて解釈されていること
(2)不足するといわれる2000万円の根拠がかなり間違った認識であること
(3)平均値だけを取り上げて、全ての人に当てはまるように解釈しても意味がないこと
といったことであった。
その後、多くの識者やFPの方々が筆者と同じような見解を述べており、程なく騒ぎも収まったが、いまだに一部の雑誌などではこの「2000万円」のバズワードを都合良く使って老後不安をあおる記事が散見される。
当時、金融庁が出した報告書に載っていた「2000万円」という金額の根拠としては、総務省統計局が毎年調査している「家計調査報告」の中に記載されている「高齢夫婦無職世帯の家計収支」がベースとなっている。同報告書の2017年のデータに載っていた毎月の実収入額と実消費額を比較し、不足が生じた分を単純に30年分に引き延ばして計算した数字がその根拠なのである。
具体的に見てみよう。次の表をご覧いただきたい。