パナソニックOBの“植民地化”に「ノー」――。パナソニックOBによる「乗っ取り」計画の標的となった上場企業の定時株主総会が6月22日に開かれ、パナソニックOBの取締役選任を求める株主提案が否決された。同社の3割超の株式を保有する大株主グループの提案とあって、大株主側が有利という事前予想だったが、パナソニックOBを経営体制から排除した会社提案が支持された。会社側の大逆転の勝利である。実質的にパナソニックOBによる支配の是非を問うた異例のプロキシーファイト(委任状争奪戦)の勝敗を分けたものとは。(ジャーナリスト 名古屋和希)
パナソニックOBによる
“植民地化”計画にノー
「第3号議案の候補者はいずれも過半数の賛同を得られませんでしたので、本議案は全て否決されました」。6月22日午後、東京都内のホテルで開かれた東京証券取引所第1部上場のコンベヤメーカー、NCホールディングスの株主総会。議長を務める同社の梶原浩規社長が集計結果を示し、総会に出席した40人ほどの株主の前でそう告げた。約3カ月にわたる経営側と大株主側の間の激しい抗争に終止符が打たれた瞬間だった。
この第3号議案こそが、今回の騒動の火種となった株主提案である。提案したのは、システム開発などを手掛ける非上場会社で、NCに3割超を出資するTCSホールディングスだ。TCSは梶原氏らの再任を盛った会社提案に反対を表明し、新たに7人の取締役の選任を要求していた。一方のNCはTCSの提案を「企業価値を損なう」と強く批判するなど、両社のつばぜり合いは株主提案をきっかけに激化していた。
そもそも一般には知名度が高いとはいえない両社の攻防に注目が集まったのには理由がある。それがTCSグループ内のパナソニックOBの存在だ。TCSは近年、パナソニックOBをグループの傘下企業に相次いで受け入れてきた。特にパナソニック元副社長の坂本俊弘氏をTCSの取締役に迎え入れた2014年以降、坂本氏とつながりがあるとされるOBが相次いでグループ入りしている。