「学歴至上主義」は
過去のことなのか?
学歴の重要性を巡る論争というのは、いつもあるし、話題になりやすい。最近では「アメリカのテック大手(米グーグルなど)が、採用にあたり大学の学位を要求しなくなってきた、もう大学なんていらないのでは」というニュースが話題になった。
そもそもなぜ学歴を求めるのか。経済学では二つの有力な説が唱えられてきた。
一つは、シカゴ大学のゲーリー・ベッカー教授らが主張する「人的資本理論」、もう一つはハーバード大のマイケル・スペンス教授が打ち出した「シグナリング理論」である。両教授ともノーベル経済学賞を取ったスーパースターであり、どちらの理論がより有効かをめぐって長年論戦が交わされてきた。
人的資本理論は、学歴を獲得するための学習によって能力、知識、技能(これを人的資本と呼ぶ)が向上し、そのことによって生産性が上がるから学歴の獲得は合理的だという。例えば、高卒者と大卒者の賃金差は、蓄積された人的資本の差だと考えるのである。