レビュー
本書『なぜか好かれる人がやっている100の習慣』を開くとまず目に入るのが、「すべての悩みは対人関係の悩みである」という、心理学者アルフレッド・アドラーの言葉だ。まったくその通りで、仕事の悩みも、恋愛がうまくいかないことも、SNSの「いいね!」疲れも、すべては対人関係に起因していると言えるだろう。コロナ禍の今、リモート会議など直接顔を合わせないコミュニケーションが増え、信頼関係が思うように築けないと悩んでいる人も多いのではないだろうか。こういう時代だからこそ、誰からも好印象を持ってもらえる、つまり「好かれる」「愛される」ことの重要性が増している。
本書は、心理学やカウンセリングを学び、キャリアカウンセラーとして講演も行う著者による、良好な人間関係を築くための指南書だ。過酷な労働環境での激務による疲労とストレスによって前歯が欠けた(!)という壮絶な過去を持つ著者の言葉は説得力がある。単にコミュニケーションのテクニックを紹介しているだけではなく、心理学の手法をベースにしているため、仕組みがわかりやすく、応用もしやすいのが特徴だ。
本書で印象的だったのは、「自己肯定感が高くなければ、真に人を慈しむことはできない」という言葉だ。言われてみれば当たり前のようだが、なかなか気づきにくいことではないだろうか。自己肯定感を高め、幸福感を高めることで、最高のパフォーマンスを発揮し、周りからも好かれる人間になる。これは、何かと他者と自分を比べて、自己肯定感が低くなりがちな現代にこそ必要な視点だろう。(千葉佳奈美)