ロス疑惑やオウム真理教地下鉄サリン事件など、数多くの難事件に携わってきた警視庁捜査一課の“伝説の刑事”、大峯泰廣氏。彼はいかにして強者ぞろいの部下たちをまとめ上げ、犯罪者を追い詰めたのか。そのやり取りを初めて明らかにした本格ノンフィクション『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』(文藝春秋)から抜粋紹介する。(ジャーナリスト 赤石晋一郎)
警視庁捜査一課の最強部隊「大峯班」
“伝説の刑事”は精鋭をいかに指揮したのか
伝統ある警視庁捜査一課でもとりわけ異彩を放っていた係があった。
大峯率いる殺人犯捜査二係、通称・大峯班である。一九九三年に殺人班捜査二係を大峯は係長として率いる立場になっていた。警視庁捜査一課で事件解決数を競う「トップ賞」の常連であり、その捜査能力は抜群だった。大峯班はまさに、“殺し”捜査の最強部隊だといえた。
指揮官である大峯が、抜群の筋読み力や卓越した取調べ術を持っていることは言うまでもない。さらに部下となった刑事たちも、大峯がこれはと目をつけて呼び寄せた精鋭ばかりだった。