2015年に発売されたヒト型ロボット「ペッパー」は一躍ブームとなり、多くの飲食店などが導入した。だが今では目新しさは薄れ、レンタル契約を終了する顧客企業が続出。提供元のソフトバンクロボティクスが生産を一時停止するに至った。同社は2021年3月期の決算で最終損益が196億円の赤字に沈むなど苦戦中だ。かつて人気者だったペッパーはなぜ落ちぶれたのか。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
かつての人気者「ペッパー」の凋落
はま寿司・みずほ銀行も“リストラ”
「故障がちだったみたいで、僕が入った時にはいませんでしたよ」――。
回転すしチェーン「はま寿司」のアルバイトとおぼしき男性店員は、ヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」について苦笑しながらこう話す。
はま寿司はペッパーを“受付係”として2016年に導入。17年には全店舗に拡大し、来店客がタッチパネルで人数や座席を選べる仕組みを整えた。当初の手応えは上々で、17年には当時の取締役がソフトバンク主催のシンポジウムに登壇し、ユーザー企業を代表して活用事例を語ったこともある。
しかし、蜜月も長くは続かなかった。現在のレンタル契約は「全店舗で終了済み」(親会社のゼンショーホールディングス関係者)だ。都内の某店舗を訪れると、かつてペッパーがいた場所には大型のタッチパネルが並べられ、静かに客をさばいていた。
ペッパーに別れを告げた“優良顧客”は、はま寿司だけではない。みずほ銀行は15年から店舗での接客要員としてペッパーを使い始め、同年7月には報道陣を集めて入行式まで開催する力の入れようだった。だが、「今はもう契約していない」とみずほ銀関係者は明かす。
JR東京駅近くのみずほ銀八重洲口支店。その特設コーナーで、ペッパーが顧客の資産運用相談に乗る姿が見られたものだが、今は跡形もない。「あまりお客さんに使われず、レンタル元に送り返しました。2、3カ月前まではそこに立っていたのですが……」と、案内係の男性はフロアを指さしながら困り顔で語る。
他にも、ネスレ日本やはとバス、患者とペッパーが触れ合う「ロボットセラピー」に取り組んでいた順天堂大学医学部附属浦安病院なども、ダイヤモンド編集部の取材に対してレンタル契約を終えていることを明らかにした。
こうした顧客離れが響き、ペッパー事業を展開するソフトバンクロボティクスの業績は苦戦中だ。