ホテルや旅館の稼働率を上げていく上で、代理店経由でお客さまに売り込む「プッシュ戦略」でなく、自ら独自サービスの魅力を発信してお客さま側から関心を持ってもらう「プル戦略」で成功している星野リゾート。そのプル戦略の核となるのは、なんといっても魅力的でユニークなサービスであり、それを継続して生み出す環境と仕組みづくりである。現場からどんどんユニークなサービスが打ち出され、お客さまに魅力を感じ続けていただくためのポイントを、星野リゾート代表・星野佳路さんに聞いた。(構成/斎藤哲也)

リゾートは走りながら進化する

 前回の連載記事、『星野リゾート代表が語る予約獲得策を変えた理由、「予想外の2つの変化」に対応』で、星野リゾートの予約獲得戦略をプッシュ戦略からプル戦略に変えてきた背景と狙いについてお伝えしました。近年ITの進展に伴って強化してきたプル戦略では、お客さまが興味を持つユニークなコンテンツを自ら作って発信することで、お客さまの方から自発的に見に来ていただくことができます。観光宿泊施設は、広告などで情報を市場にプッシュするのはコスト採算が合わず、プル戦略に持ち込むことが重要です。

 いかにユニークなサービスを創造していく環境と仕組みをつくるかが、プル戦略の核となります。前回は「星野リゾート トマム」の「雲海テラス」の事例を挙げましたが、もう一つ別の事例も紹介しましょう。

 2001年に再生に着手した「リゾナーレ八ヶ岳」の取り組みです。同ホテルは「大人のためのファミリーリゾート」をコンセプトに掲げ、夏休みを含むトップシーズンは高い稼働を維持できるようになりました。