「転職でスカウトが来る人」と「その他大勢でスルーされる人」の決定的な差

誰でも知っているような会社で働いていて、十分な実績を持ち、転職活動なんて経験せずにヘッドハンティングだけで転職先を決められる……。どんな会社からも引く手数多の「S級人材」とそうでない人の違いは、いったいどこにあらわれるのでしょうか。「職業人生の設計」専門家である北野唯我さんは、転職人材「上位5%の人」だけに共通する働き方があると語ります。
今回は、20万部突破のベストセラーがマンガ化された『マンガ このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』の発売を記念し、「S級人材」に少しでも近づくための行動習慣について聞いてみました。

──『マンガ 転職の思考法』には、転職市場には「S級人材」が存在する。「自分がS級人材に当てはまるかどうか」によって転職活動のやり方は大きく変わってくる、というお話がありました。

──この「S級人材」というのは、だいたい上位何%くらいのイメージですか?

北野唯我(以下、北野):上位5%くらいだと思います。多く見積もったとしても、1割いるかいないか。9割の人はS級人材ではないので、さまざまな方法で転職活動をしていかなければなりません。

「当たり前」の積み重ねが決定的な差を生む

──北野さんから見て、上位5%に入れる人と、そうでない人、もっとも決定的な差はどこに現れると思いますか?

北野「基本原則の徹底」「つねに学び続ける姿勢」の二つですね。「えっ、それだけ?」と思うかもしれないのですが、こういう当たり前のことをちゃんとできている人って、じつはとても少ないんです。どちらか一つだけでもダメで、両方を併せ持っていなければ「S級人材」とは言えないと思います。

 もちろん、職種や業種によっても必要なスキルは異なります。けれど、どこにいても共通して重要なのは、人間としての誠実さ。仕事の基本は信頼関係ですから、「仕事の基本」と言われるようなことをきちんとできているかどうか。一つ例をあげると「仕事が速い」というのも基本原則ですよね。

──たしかに、優秀な人の特徴として「スピード感」をあげる人も多いですよね。

北野:私は、新卒のメンバーや内定者と話す機会も多く、「『仕事ができる人』に最短でなるにはどうしたらいいでしょうか?」と質問をされることも多々あるのですが、何よりもまずスピードを追い求めたほうがいいと伝えています。

 私自身も、仕事の速さはすごく意識しているところで。ほかのメンバーが4時間かけてつくる企画書を、私は30分でつくれたりして驚かれます。でも、これは特別なことをしているわけではなく、単純に20代のころから、とにかく「すぐやる」「すぐ出す」「すぐ答える」と意識していたので、スピード感をもって仕事をすることが習慣になっているんですよね。

 でも、やっぱり「4時間くらいかかるだろうな」と思うような仕事を30分で終わらせて提出するって、誰もやらないんですよ。練習すれば誰でもできるはずだけど、誰もやらないから結果的にものすごい差になるんです。

「S級人材」かどうかの差は、こういう「誰でも訓練すればできるはずなのに、じつは誰もやっていない仕事の基本原則」を毎回きちんとやり続けられるかどうか、その積み重ねによって生まれると思うんです。

環境のミスマッチで才能を発揮できない「隠れS級人材」

──「つねに学び続ける姿勢」についてはいかがでしょうか。

北野:仕事の基本原則をしっかりとおさえたうえで、自分の技術を向上させていこうという学習意欲があることも重要です。

 マーケットはつねに変化し続けていますよね。テクノロジーの進化に伴って売れるものも変わっていく。YouTubeやTikTokも10年前はほとんど知られていませんでした。そういった激しい市場の変化に置いていかれないように、つねに学び続ける姿勢をキープできないと、上位5%にい続けることは難しいでしょうね。

──この二つを兼ね備えているにもかかわらず、才能を発揮しきれていない、いまの職場で評価されていない「隠れS級人材」もいるのでしょうか?

北野:大勢いると思いますよ。環境がマッチしていないばかりに埋もれてしまっている場合も多いでしょう。

 転職とは、そういう「個性」×「環境」のミスマッチを変更させる仕組みとも言えます。一生懸命仕事しているのに、なかなか給与も上がらず、昇進もしない……。という人は、環境が合っていない可能性もあるので、「転職の思考法」を使って、自分の働き方を考え直してもらえたらと思います。

結果を出すために必要なのは「努力」ではなく「工夫」

──9割の人はS級人材に当てはまらないと思うのですが、少しでも近づくために、何ができるでしょうか? こういうことからはじめるといいよ、という行動や習慣があれば教えてください。

北野:自分がいる会社や組織で活躍している人たちに聞いてみるのがいちばんいいと思います。いつも結果を出している人がどんなふうに仕事を進めているのか聞いて、そのとおりに真似してみる。結局、自分が活躍したい場所で結果を出している人の行動パターンをコピーするのがいちばん効率的なんですよね。

 でも、やっぱりそういうことって誰もやらないんですよね。人に教えてもらって真似するってめんどくさいしだるいんで(笑)。

──たしかに。そこまでやらなきゃいけないのか、と思うとなかなか動けない人が多い気がします。優秀な人に教えてほしいと頼むって、勇気がいりそうですし。

北野:でも、さっきの話ともつながりますけど、やっぱり誰もやらないことだからこそ、行動してみると差になるんだと思いますよ。

──北野さんご自身は、どのようにスキルアップしてきましたか? 新卒で博報堂に入社、その後ボストンコンサルティンググループを経て、現在はワンキャリアの最高戦略責任者と、つねに結果を出し続けてこられたと思うのですが、挫折経験などあるのでしょうか。

北野:挫折だらけですよ! 新卒で博報堂に入社したばかりのころは、適当に仕事をしていましたね……本当に……(苦笑)。

──ええ! そうなんですか?

北野:大きな会社でしたし、自分が頑張ろうが手を抜こうが、結果は同じだと思っていたんです。だから最低限、求められる仕事だけ適当にこなしていたんですよね。要するに、「置きに行く」スタンスで仕事をしていたんです。でも、先輩や同期などいろいろな人と仕事していくうちに、「一生懸命仕事に向き合うかどうかで自分のキャリアは変わるんだ」と気が付いて。

 リクルートの昔の社訓で「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉があるのですが、これは真実だなと思っていて。スタンスが変わると、環境を変えるチャンスがやってくる。環境を変えると、自分も変わっていく。

 自分自身が全力で成果を出さないとチームを本気にさせられないし、チームを本気にさせられない人が、会社や社会を変えることはできないんだな、と。

──スタンスの違いによって成果は大きく変わる、ということでしょうか?

北野:たとえば、「このデータ、分析しておいて」と上司に頼まれたとしますよね。そのとき、言われたとおりに「はい、データ分析しておきました」と戻すだけなのは置きに行った仕事です。

 変わりたければ、成長したければ、相手の期待値を超えられるように自分で「工夫」し続けるしかない。

──なるほど。「工夫」ですか。

北野:大事なのは「努力」ではなく「工夫」なんです。自分の工夫や知恵を入れることでしか、バリューを生み出すことはできない。

「データ分析をしておいて」と指示されて、言われたことだけをそのまま返すのではなく、「分析結果をチームで共有できるようにまとめておきました」とか、相手の期待値を超えられるように工夫する。これだけでも全然違いますよね。

──そうか、「無駄な努力をするな」という話をよく聞きますけども、こういうことなんですね。

北野:現場で仕事をする人は、どうしても「努力」や「熱意」を評価してもらいたがるんですよ。でも、お金を払う側・雇用側が求めているのは「努力」ではなく「工夫」なんです。自分の頭を使って工夫し、きちんとバリューを生み出してくれるかどうか。もちろん、努力がいらないとは言いません。ただ、結果を出すには、工夫こそすべてなんです。

 自分が近づきたいと憧れる上位5%の人はどんな「工夫」をしているんだろう? と考えるだけでも、働き方は変わってくると思いますよ。

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「転職でスカウトが来る人」と「その他大勢でスルーされる人」の決定的な差北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役などを経て、現在、ワンキャリア取締役。テレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』(以上、ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などがある。最新刊は『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』
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