昨夏、ルフトハンザドイツ航空が1時間に120万ドル(約1億3300万円)強のペースで資金を燃焼させる中、同社のカーステン・シュポア最高経営責任者(CEO)はビデオ会議システムを通じ、欧州航空機大手エアバスのCEOと協議した。シュポア氏の最優先課題は、新型コロナウイルスの感染拡大が起きる何年も前に発注し、同社に支払い義務がある数十億ドル分の航空機について、納入延期を求めることだった。やり取りをよく知る複数の関係者はそう明かす。エアバスのギヨーム・フォーリーCEO(53)は「ノー」と答えた。コロナがまん延する時期にフォーリー氏が主に力を入れたのは、大口顧客や最も忠実な顧客に(その一部は経営危機にひんしていたが)契約義務を厳格に守らせることだった。この賭けは業界の慣習に反するが、それがエアバスの業績を押し上げ、米同業大手ボーイングに対してこれまでで最も強力な競争上の優位を手に入れた。