次の日、A子はC社長に自分の勤務形態を週4日で曜日指定できないかと聞いてみた。C社長は、「ウチの会社の正社員の条件は週5日のシフト制勤務で残業ありと決まっています。週4日勤務だと、いったん退職してその後は1年更新の契約社員として働くことになりますが、それでもいいですか?」と答えた。

「私、正社員じゃなくなっちゃうんだ……」

 A子は一瞬戸惑ったが、その代わり占い師としてもっと活躍しようと思い直した。その後C社長から契約社員の待遇について説明を受けたA子は、2月末で正社員を辞め、3月から契約社員になることにした。

契約社員になったとたん、給料が激減

 4月中旬、A子は契約社員として初めて支給される給料明細書を見て驚いた。給料額が正社員のときより極端に減っていたのだ。

「ええっ、そんなバカな!」

 あわてて電卓を片手に検算を始めた。基本給が減ったのは、出勤日数が減ったこと、月給から時給になったこと、主任手当の支給がなくなったことで納得できた。しかし、もう一度よく目を凝らして給料明細を確認すると、あることに気がついた。

「あっ、通勤手当が入っていない!」

 実家暮らしのA子は、会社まで電車とバスを2回乗り継ぎ、1日の通勤交通費は往復で4000円かかる。週4日勤務で計算すると、ひと月約6万8000円。この費用が全額自腹だと、最終的に手元にはわずかしか残らない。

 怒りで頭に血が上ったA子は、社長室へ駆け込みC社長に訴えた。

「給料に通勤手当が入っていないのですが、計算ミスではないでしょうか?」

 しかしC社長は

「給料の計算は間違っていないよ。あれ、説明しなかったっけ?ウチの会社では通勤手当が出るのは正社員だけ。契約社員やパート社員には出していないんだよ」

 と素っ気なく答えた。

「そんなの困ります。どうして出してもらえないんですか?」
「もともとの規則だから仕方がないでしょ?」

 そして「契約社員やパート社員は会社の近くに住んでいる人ばかりだから、今まで通勤手当が出ないことでとやかく言われたことはないよ。何なら君も実家から会社の近くに越して来たらいいじゃない?」と付け加えた。