サッカーシーズンたけなわで夜ごと寝不足のアナタ。どうせ熱狂するなら自分もフィールドに出よう。心疾患予防のハットトリックがかなうのだから。
先月、米国スポーツ医学会の機関誌に報告されたデンマークの研究によると、1週間に2時間のサッカートレーニングを半年続けた結果、血圧改善と減量プラスアルファの効果を達成したのだ。
対象は31~54歳の男性、33人。いずれも軽度~中等度の高血圧患者で、一部はすでに降圧剤を服用していた。この33人を二つのグループに分け、11人には運動や食事改善に関する医療的な助言を、もう一方の22人には1週間に1回2時間、「きつい」と感じる程度のサッカートレーニングに参加してもらった。
半年後、サッカー群では収縮期/拡張期血圧ともに10mmHg低下したが、助言のみ群では半分の5mmHgの改善だった。また、サッカー群では持久力や運動能力を表す最大酸素摂取量が10%向上し、体脂肪も平均2キログラム減少したのである。さらに、安静時の心拍数が1分当たり平均8回も低下。過去の大規模研究からは、中高年期の安静時心拍数が1分間に85を超えると、長期的に心疾患死が増加することが知られている。安静時心拍数の低下が即、心疾患死を予防するかは証明途上だが、少なくとも70未満では死亡リスクは減少するとされる。つまり、サッカーで心疾患死リスクの代表である「血圧」「体脂肪(肥満)」、そして「安静時心拍数」の三つが改善されたワケ。まさにハットトリック!! なのだ。
研究者は、サッカーが高血圧患者の心疾患死を予防する効果を示した初めての報告とし、「慣例的な医師のアドバイスより、よほど効果が期待できそうだ」と付け加えている。ちなみに、一般的な有酸素マシンで運動した際もサッカー群は心拍数が安定し、体脂肪燃焼率も向上していた。身体が思うように動くのだから普通のエクササイズも楽しい。
ということで「同じ(サッカー)阿呆なら、蹴らにゃ損損」なのだが、イキナリきつめの運動はご法度。確実に関節を痛めます。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)