6月末に経済協力開発機構(OECD)が発表した「ヘルスデータ2012」によると2010年時点で世界第1位の肥満大国は米国。人口に占めるBMI30以上の肥満率は35.9%、3人に1人は肥満ということになる。かたや日本は肥満率3.5%で、OECD加盟国中最下位の34位。日本で「肥満」とされるBMI25以上で比較すると、米国の68.0%に対し、日本は25.1%だった。人類の歴史上、人口の7割、3人に2人が肥満~太り気味の国が出現するとは誰が想像したろう。
個人の健康にとっても、肥満は喫煙に匹敵するリスク因子だという認識が広がっている。OECDの統計によれば、重度肥満者は正常体重者より8~10年早世する可能性があり、年間医療費も25%上回る。個人の肥満対策はダイエットが基本。ただ、試みてはリバウンドを繰り返している方も多いはず。いかに長く適正体重を維持するか悩ましいところだ。
先日、総合医学誌「JAMA」に適正体重の維持に最適な食事療法の研究が報告された。食事療法で10~15%の体重低下を達成した『元』肥満者に、同じカロリーの(1)低脂肪食、(2)緩めの低炭水化物食、(3)厳しい低炭水化物食をそれぞれ間を置いて4週間ずつ摂ってもらった。
その結果、低脂肪ダイエット中は「安静時エネルギー消費量(REE)」が著しく低下することが判明した。基礎代謝が低下するので、リバウンドしやすい状態である。逆に二つの低炭水化物ダイエット中はREEが上昇。エネルギーを消費しやすい「痩せ体質」を維持できるようだ。消費量の差はおよそ300キロカロリー/日。早足ウオーキングで1時間、ゴルフなら1ラウンドの消費量に匹敵する。どうやらダイエット成功後は、摂取カロリーより食事の内容を吟味したほうがよさそうである。
ちなみに、厳しい低炭水化物ダイエットは「アトキンス法」に準拠したもの。これには賛否両論あるので、取り入れるなら「緩め」で十分だろう。試験ではご飯などの炭水化物を総カロリーの40%以下に抑え、20%をタンパク質、残りを脂肪という内容だった。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)