高血圧は降圧剤、高コレステロールは脂質異常症治療薬と、検診で黄色信号がともるたびに増える薬。治療薬はターゲットを絞り込んで開発されるのだから、当然ではある。その点、生活習慣や食習慣改善の波及効果は大きい。
9月19~22日に開かれた米国心臓協会高血圧研究学術集会で、福岡大学筑紫病院のD.Sankar氏らが報告した研究によれば、米ぬか油とゴマ油のブレンド油は血圧と脂質を同時に改善する効果があるという。
同氏らの研究グループはインド・ニューデリーで平均年齢57歳の早期高血圧患者300人(男性160人、女性140人)を、降圧剤のカルシウム拮抗薬を服用するグループと、ブレンド油で調理した料理を食べるグループ、降圧剤とブレンド油の両方を摂取するグループの三つに分け、60日間観察した。
その結果、降圧剤服用グループで収縮期血圧(上の血圧)が14ポイント、ブレンド油を使ったグループでは16ポイント低下した。降圧剤+ブレンド油のグループではさらに改善効果が大きく、上の血圧が36ポイント、拡張期血圧(下の血圧)が24ポイントも低下したのである。
降圧剤で血圧が下がるのは当然だが、ブレンド油単独でも薬に匹敵する効果が得られたのは興味深い。しかも、ブレンド油を摂取したグループでは、悪玉のLDLコレステロール値が油の単独摂取で26%、降圧剤との併用で27%減少し、善玉HDLコレステロール値は同じく9.5~10.9%上昇していたのである。一方、降圧剤のみではコレステロール値に変化は認められなかった。
研究者はゴマに含まれるセサミン、セサミノール、米ぬかに含まれるオリザノールなどの抗酸化物質が血圧および脂質の改善に作用したとしている。期間が短いためブレンド油が薬の効果を上回る、とは言い難いが、毎日の食卓に取り入れる分にはよさそうだ。
ちなみに米ぬか油とはJAS規格でいう「こめ油」のこと。コレステロール値を下げる作用が知られており、一般には精製油とサラダ油として流通している。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)