「わが母国は衰退への道をたどっている」。最近、シリコンバレーに長く住む日本人の間で、よくささやかれる言葉だ。常にイノベーションを起こして新しい産業が興隆するシリコンバレーから日本を見ていると、今までのやり方から抜け出すことなく、変革に挑戦しない様子が見えて、歯痒いのだろう。
在外邦人が持つ共通の認識は、若い世代が日本を引っ張らないといけないということだ。しかし、若者世代が奮起し、これからの日本を引っ張っていこうという、うねりが起こるような気配はない。
私は、その最大の原因は「終身雇用・年功序列」だと考えている。
今の日本にとって、終身雇用・年功序列は弊害が極めて大きい。新卒入社した社員は、少しずつ仕事を覚え、先輩や上司の指導を受けながらゆっくりと昇進していく。給料の上昇もゆっくりであるため、結婚してローンで住居を購入し、子どもが生まれて家族が増える頃には、その社員の家計は生活するだけで精一杯となる。
若者世代は、家計を破綻させないために、会社に居続けることが最優先になる。そのため、先輩や上司に真っ向から意見することは避け、会社の方針に反対を唱えたりはしない。自己研鑽のために留学したり、新たな境地を切り開くために休職して充電したりするお金もない。経済的理由で、変化や成長への意欲すら持てなくなり、保守的になってしまうのだ。