過去10年にわたって電池の価格が下がり続けたことで電気自動車(EV)の価格競争力は増した。しかし今、EVの需要増でこの流れが途絶えるかもしれない。主要原料の争奪戦はこれまで以上に重要な意味を持つようになるだろう。EV需要が急増する中、電池材料の価格は今年に入ってから高騰している。調査会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスによると、カソード(正極)に使用される炭酸リチウムの価格は年初の2倍となり、エネルギー密度を高め、電池寿命を延ばす水酸化コバルトの価格は40%以上上昇した。混乱をもたらしたのは新型コロナウイルスの世界的流行だが、特にリチウムについては本当の課題はもっと根本的なところにある。S&P グローバル・プラッツで電池用金属の価格を担当するスコット・ヤーハム氏は「過剰供給で2018年半ばから2020年半ばにかけて価格が暴落した結果、複数のプロジェクトが操業休止になり、他の複数の新規プロジェクトが止まった」と話す。